内容説明
今からちょうど千三百年前、『古事記』が誕生した。令の制定や平城京遷都など、古代日本の急速な近代化が進められるなかで、なぜこのような「時代に遅れた書」が作られたのか。縄文・弥生時代に遡る神話が、国家成立期にまで生き残ったのはなぜか。「記序」贋作説を検証しながら分析する。さらに、アメノイワヤト神話を例に、歌垣、酔っぱらい体質、銅鏡と鉄鏡の違いなど、多様な視点から新旧の層に区分けして解読する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
14
『古事記』と『日本書紀』の関係について、著者は『日本書紀』は現代政治史に主眼を置いた歴史書、『古事記』は「古」への回帰を主眼とした神話書としてどちらも国家意志に基づいて成立したとする。『古事記』に描かれる内容について、著者は長江流域の無文字諸少数民族への現地調査を行い、その類似性を指摘する。本来なら国家段階まで継承されることのなかったはずのムラ段階の神話が、縄文時代から和銅5年(712年)までの長期間にわたって継承されたことを高く評価する。2026/05/15
モリータ
13
神話の段階わけ、ふつう知らない長江流域少数民族の神話、アマノイワヤトの話に反映されると考えられるものの整理など面白かったが、酒を飲んで吐くのは神懸かり、アマノイワヤト神話に少数民族の太陽と月の神話が流入したもの(だが、月と太陽を撃ち落とすといった部分は消えた)といった話はそうとも取れる、という感じで、あまり納得しなかった。あと最終章の日本人のアイデンティティー云々の話はこの紙幅では必要ないのではとも。そしてやはり日本書紀は読まんとなぁ。2016/02/05
読書実践家
8
天皇の系譜を知り、シャーマニズムや卑弥呼といった古代の日本人の信仰や政治についても見ていく。実資料にあたっており、現代語訳もあるので、理解しやすい。2016/03/28
のんき
6
古事記と日本書紀はほぼ同じ時代に編纂された書物だけれども、その性格は異なっている。日本書紀は当時の現代政治史であるのに対し、古事記は「古」への回帰の書である。その「古」をさらに新旧の層にわけ、アメノイワヤト神話を例にとって解説していく。 「ムラ段階社会」を「縄文弥生期」と一括りにしてしまうことに抵抗を感じたけれども、こういう視点で古事記を読んでいくのも面白いと思った。2012/06/22
midorikawa-e
5
以前、別の本の感想で、ドメスティックな視点だけでは記紀神話は理解できないなんてことを書きましたが、この本を読んで、さらにその意を強くしました。著者は、文献のみならず、長江流域の少数民族の口承神話を求めてフィールドワークもされています。そのスタンスを支持したい。細かい部分が正しいかどうかといった判断は、門外漢の私には無理ですが、神話の起源や伝播、さらにはそれが部族や国家の成立とどう関わるのかについて、結論(というか正解)を早急に求める必要はないと思います。2015/05/12




