内容説明
朝葉は勉強も部活も要領よくこな優等生。部員の仲を取りもつ毎日を過ごすうちに、本音を飲み込むことに慣れ、自分の意見を見失っていた。そんなある日、朝葉は自分の顔が見えなくなる「青年期失顔症」を発症し、それを同級生の聖に知られてしまう。いつも自分の考えをはっきり言う聖に、周りに合わせてばかりの自分は軽蔑されるはず、と身構える朝葉。でも彼は、「疲れたら休んでもいいんじゃねぇの」と朝葉を学校から連れ出してくれた。聖の隣で笑顔を取り戻した朝葉は、自分の本当の気持ちを見つけはじめる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
30
本音を飲み込むことに慣れ自分の意見を見失ってしまった優等生の間宮朝華。彼女が自分の顔が見えなくなる「青年期失顔症」を発症してしまったことを、同級生の朝比奈聖に気づかれてしまう青春小説。親のプレッシャーや、部活で仲を取り持つ日々に疲弊していた朝華が発症した青年期失顔症。彼女に自分の考えをはっきり伝えて、外に連れ出して気分転換に付き合ってくれた聖。理解してくれる人たちもいて、部の仲間や顧問の利己的な発想や親とも向き合い、笑顔を取り戻してゆく展開は良かったですね。朝華を意識していた聖のエピソードも良かったです。2023/10/27
栗山いなり
6
自分を抑えすぎたがために自分の顔が見えなくなる病を発症してしまった少女の再生と成長を描いた物語。この手の物語を最近何冊も読んできたせいかこの作品ならではの感想を上手く説明できないけど、何でか分からんが心にズシっと来るものがある作品だったな2023/10/19
史
5
人間は人間であるが故にキャラクターと化す。そうしなければ全てなくってしまいそうだから。だけどそれは本当とはかけ離れたもの。無理矢理演じることの息苦しさが、精神の病で現れる世界で、悩み悶て苦しむ少女の姿はとても心にくるものがある。悪意の積み重ねや旧世代的な価値観に翻弄されこの世に救いはないのかと嘆きたくもなる。一方で、きちんと今を理解して親身になってくれる人や善意の形も存在している。だからこそ、少女たちは希望をもたらす小さな光を目指すのかな。いやはや青春期の難しさをよく描いております。これこそスターツ出版。2023/11/01