内容説明
蘇我馬子、推古天皇、聖徳太子――古代史を彩った傑物たちの愛憎劇
政敵との死闘、推古大王・聖徳太子との愛憎の果てに馬子が得たものとは。
かつて日本の中心地であった飛鳥(現在の奈良県明日香村)を舞台に、
蘇我馬子の国づくりにかけた生涯を描く。
時は570年、病床に臥す父・蘇我稲目から強大な豪族・蘇我一族の頭目の座を受け継ぎいだ馬子。
以来、大王に次ぐ大臣として、日本に渡ったばかりの仏教に根差した国家を目指して邁進していく。
しかし、理想のためには謀略や暗殺も辞さず、馬子は血塗られた覇道を歩んでいくのであった――。
宿敵・物部守屋との争い、日本最古の女性天皇・推古との知られざる関係、
天才・聖徳太子への嫉妬と恐れなど功罪相半ばする日本最古の〝悪役〟の実像とは。
古代史浪漫小説、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y.yamabuki
20
面白かった。前半は潰される前に潰すという当時の一族、権力の護り方に共感は難しい。時々の心情は分かるし、国を護りたい気持ちも本心であろうが。中盤は大陸を意識した国造り、興味深かった。鉄を得るための外交、そこには仏教を基にした文化国家であることが必要となる。後半人間ドラマの様相を帯びてくる。権力を握れば、命を狙われる心配が尽きない。後世迄の安定を図るため、パズルの様に婚姻関係を結ばせようとする額田部と馬子。利用される女性は切ない。額田部も高句麗から連れて来られた美女媛も。でもこうして日本の国の基盤が→ 2023/12/12
TheWho
8
時は、4世紀後半から5世紀初頭の飛鳥時代に4代の大王(天皇)の大臣として権勢を振るい蘇我氏に繁栄を齎した異彩の政治家である蘇我馬子を語る古代史絵巻。後に天皇外戚として、また権謀術数で政敵に対する藤原氏とは違い、自ら武力を用い更に天皇弑逆と云う前代未聞の暴挙を厭わない荒々しさが際立つ古代日本を描写していた。しか志那・三韓外交や仏教振興、そして大王から天皇制への移行等後の日本史への影響を多大に齎した大政治家であった事が随所に伺われ、新たな蘇我氏を描いた興味深い一冊です。2024/04/17
coldsurgeon
4
古代日本の中央集権国家への方向付けを行った蘇我馬子の一代記。大和政権を仏教国として東アジアに認識させることにより、中華冊封体制の中で位階を上げ、同時に大王(天皇)の権威を高める結果を生んだのは、策士として馬子の成果だろう。対抗勢力としての大王、豪族、厩戸王子らを滅ぼしていった大悪人でもあった。目的のために手段を選ばず、一族の勢力拡大と子孫への遺贈に心が向かいすぎたために、その後の乙巳の変を招いたのかもしれない。2023/11/25
のりさん
3
この時代の小説は初体験。この時代の蘇我といえば圧倒的権力で支配していたイメージだけれど、実際はかなり危ういバランスの上で成り立っていたことを初めて知った。序盤守屋に出し抜かれすぎて、もう少し注意払っとけよと思ってしまった。後半の見所は何と言っても厩戸(聖徳太子)。彼の非凡ぶりを遺憾なく描きつつ、ちょっと挑発的で小憎たらしい一面がなんともいい味を出してた。正直中学歴史レベルの知識しかなかったので大変勉強にもなりました。2024/02/02
めご
3
飛鳥時代、仏教を基盤とした国造りを目指す蘇我馬子の物語。物部氏や推古天皇、厩戸王子らとの駆け引きは人間味があって、まるで神話や異世界のような古代史であっても、昔から人間の欲というものは変わらないのだなぁ、と感じる。ただ、あまり感情移入することはなく、歴史小説というより歴史書や年表を読んでいるような感覚でした。2024/02/02