内容説明
紫式部,清少納言と並んで王朝女流文学を代表する歌人,和泉式部.「永遠の恋の彷徨者」といわれるその和歌を,サッフォー,ルイーズ・ラベ,ディキンソンなど古今東西の女性詩人と比較しながら論じる古典エッセイ.詩的想像力,ことばの美しさ,内面の深さ等から,和泉式部を世界文学の中の最高の女性詩人として位置づける.
目次
まえがき
序 平安女流文学と和泉式部の位置
和泉式部小伝
I
恋・うかれ女
恋・待つ女
愛欲
II
未練・夫道貞への思い
勘当・父と娘
III
あくがれる魂
夢の歌
IV
喪失・帥宮挽歌群(一)
悲嘆・帥宮挽歌群(二)
V
涙・泣く女
母と娘・小式部哀傷歌
VI
手ごわい女
思惟の力
VII
憂き身と憂き世
死を見つめる眼
主要参考文献
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はと
14
超恋愛体質の和泉式部と和泉式部にうっとりの著者。和泉式部自身自分の感情を持て余してしまうような情熱的な女性なのに、著者のメロメロぶりがさらにそれを増幅させ、本から情熱が零れ落ちそうになっている本書です。女である私は、正直そこまで入れ込めず、うーん、「憂き世」「憂き世」と言いながら、けっこう楽しそうじゃないか、と思ったり。もちろんいい歌もたくさんあったんですけどね。それにしても、和泉式部の歌の口語訳がいちいち載っているわけではないので、口語訳本を片手に読まないと歌の意味がわからない(~_~;)2014/05/10
双海(ふたみ)
12
著者の並々ならぬ思い入れが熱い。こういう評伝もあっていいよね。「式子内親王私抄」もおすすめ。2024/03/10
Kaname Funakoshi
1
世界文学史上珍しく、女性作家が極めて高品質の作品を次々に生み出していた平安時代、物語の頂点に紫式部がおり、歌の頂点には和泉式部がいた。西洋詩の専門家がアマチュアとして和泉式部の歌への愛を語る。和泉式部の作法は思いをそのまま言葉にする「正述心緒」(窪田空穂)で万葉風。コミュニケーション手段としてみんな似たような歌を作っていた時代、万葉時代の作風で恋から死生まで深みのある歌を量産していたのに惚れたらしい。百人一首で扱われるような女性歌人の中では図抜けて迫力ある歌を作ると思っていたのだけどさもありなん。2016/06/18
ひろゆき
1
冒頭からの著者の和泉式部への余りに熱い思い入れに圧倒されて読みました。世界一レベルの女性詩人!たしかに、と興奮しました。あまり和歌には興味ないですが、それなりに楽しめました。でも鑑賞以前に、その和歌の何を言っているかの解釈が専門家のなかでも異論があるのでは、短詩では仕方ないのでしょうが、世界一と言うのは無理があるような。 日本のなかでそっとつぶやくのが賢明かと。2013/07/10
hrn
1
和泉式部の和歌は綺麗、美しい、映像的。和歌を読むのが苦手なわたしでも、親切な解説(訳ではない)があって、情景が心に浮かびわかりやすく読めました。著者の和泉式部に対する思い入れが感じられる、(いい意味で)熱い解説もあり面白かったです。2009/03/19