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内容説明
絶海の孤島、南硫黄島。本州から南に1200kmの場所にあり、その開闢以来人類が2度しか上陸したことのない、原生の生態系が残る奇跡の島である。
本書は、その島に特別なミッションを受けて挑む研究者たち(主に鳥類学者)の姿を、臨場感あふれる筆致で描く冒険小説であるとともに、進化や生態についての研究成果報告書でもある。
襲い来るサメ!崩れ落ちるガケ!降り注ぐトリ!噛みつくコウモリ!大気がハエ!(サメ以外は本当です)。抱腹絶倒空前絶後の科学エッセイがここに誕生。
目次
はじめに
第1部 探険・はじめまして 編
[1] 上陸と幕営と始まりの始まり
[2] 学術戦隊ミナミイウォー
[3] アカパラ発見せり
[4] アカパラ・アナザーミッション
[5] 順番を待ちながら
[6] 崩落地を登る
[7] 森を抜けて高みを目指せ
[8] 山頂は死体とともに
[9] ハエ時々クロウミツバメ
[10] コルの日
[11] カフェ・パラディッソ
[12] さよならまた会う日まで
第2部 熟考・ここが天王山 編
[13] 島にないものと、島にしかないもの
[14] 北硫黄島・パラレル・アイランド
[15] 海鳥ヒッチハイクガイド
[16] 島の鳥のつくりかた
[17] 誰がハヤブサ殺したの?
第3部 灼熱・宴もタケナワ 編
[18] 再会・南硫黄島
[19] ここはいつか来た海岸
[20] 再び、コルへ
[21] 山頂ではウミツバメの夢を見る
[22] 下山とメガネとカッポレと
[23] ミッション・ポッシブル
[24] 僕らが島に来る理由
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
道楽モン
22
10年に1度の南硫黄島への研究調査2回分。軽妙な文章に定評の鳥類学者である筆者の筆が絶好調で、読んでいて楽しすぎる。調査隊の使命と学術的な貴重さ、地形的な理由から人が足を踏み入れられない日本唯一の島への上陸という冒険の苦労の二本立て。タイトルに偽りなし。私の大好きなカタツムリ学者の千葉聡氏も2回ともに参加していて、やたらメガネを無くしているのが可笑しい。各分野の専門家たちが、実際に根気強く調査をしている姿が生き生きと活写され、これは後身の徒に貴重な資料となるのだろう。そして学問は継承されてゆくのだ。2023/09/07
雲をみるひと
21
鳥類学者による二回の南硫黄島、北硫黄島の調査参加記。記載の中心は南硫黄島の一回目の調査の模様。ほとんど人跡未踏の南硫黄島の調査記というだけでそもそも興味深いが、生息する鳥類と環境の関係が論じられており内容も物凄く濃い。調査団員のキャラクターや関係性の記載なども面白い。たまにあるおちゃらけ系の描写は好き嫌いがあるかもしれない。2023/12/02
ツバメマン★こち亀読破中
17
前から少し気になっていた著者さん。本州から南に1200km、父島から船で17時間の南硫黄島はその地形の厳しさからこれまで人為的影響を受けていないまさに絶海の孤島。2007年、2017年に行われた調査隊に鳥類の研究者として参加した著者が、島での調査の実態を紹介します。この著者は学者なのですが、エピソードをいちいち面白おかしく書こうとしていて飽きさせません。読み進めるうち、いつの間にか南硫黄島のこと、生息している鳥類のこと、さらには調査とは?研究とは?ということまでがわかって面白かったです!2023/10/15
うみ
16
他の著作でも、南硫黄島の調査の話はちらほら書かれていたが、これは南硫黄島のみの本。期待して待っていた。空から鳥が降ってくるとか、メデューサの髪のごときウツボとか、キャンプが流されそうになるとか、眼鏡がなくなるとか、まさしく、研究と冒険、半分半分。川上先生の文体は悪魔的な中毒性があって、読み出すと止まらない。今回も止まらず、夜更かししちまったぜ。2023/09/21
フク
13
#読了 バード川上による無人島冒険譚。これまでの著書で触れられていた南硫黄島などの調査時のエピソードが山盛り。 カフェ・パラディッソの現実は想像よりも過酷だった。 〈気休めは必要だ。気が休まるからな〉2023/09/25