内容説明
殺したいほど憎み、恨んでも、家康との愛に生きた女たちの物語。桶狭間の後、「お起ちなされ」と家康に今川家からの独立を促した母・於大。その決断によって悲劇に追い込まれ、家康を憎むことになる正室・瀬名。自ら鎧を身にまとい、三方ヶ原で逃げ帰った家康にぬるま湯をぶっかけ、鼓舞した於葉。家康の弱さを受け止め続け、関ヶ原でも轡を並べたお須和(阿茶)。――徳川家康という男に惚れ込み、時に憎み、生涯を懸けて愛を貫いた九人の女たちの姿を描く歴史小説。文庫書き下ろし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
16
家康と言えば、忍耐、臆病だが果断、野戦の名手、先見性と慎重さを持つ政治家などと共に、寡婦や離縁された女たちを含め、何十人もの側室・側女を持ち、一人では寝られない女好きという面があります。そういう方面の本かと思ったら、ちょっと違いました。 ここに登場する女たちは、女の身でありながら家康の前で刀を揮い血しぶきを浴びた側室たちもいますが、苛酷な生涯を送った母・於大、祖母・於富の描き方がすごい。そして叔母・於満、従妹・お田鶴。 ──この物語のどれだけがフィクションなのかわからないけれど、心を動かされます。2023/12/07