内容説明
「日本最高の傑作戦闘機」と米軍に語らしめた日本陸軍の二千馬力戦闘機・疾風--日米開戦とともに設計に着手され、苛烈さを増す最前線の期待を担って登場した高性能機。その誕生までの設計陣の足跡、奇蹟のエンジンと呼ばれた”誉”発動機の開発秘話、比島・沖縄戦での疾風の奮戦を描く感動のノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鐵太郎
22
大東亜決戦機と大々的に喧伝され、太平洋戦争後期の日本陸軍戦闘機のエース的存在だった四式戦闘機、愛称「疾風(雑誌の一般公募で付いた国民向け名称)」の生まれから終焉までを手際よく描き出したもの。陸軍呼称としては「キ84」だったのだけど、「きのはちじゅうよん」「きのはちよん」と呼ばれていたとは知らなかった。この戦闘機が類いまれな名機となるまでの経緯、発動機や兵装、各種設計の妙などについての記述が興味深い。後半の奮戦ぶりの記述はいささかエモーショナルで画一的だが、木製や鋼鉄製の疾風の試作まで網羅した見事な一冊。2023/11/06
Miyoshi Hirotaka
18
零戦は千馬力級の名機。開戦当時は敵なし。一方、わが国が二千馬力級の戦闘機の開発をスタートさせた時には、米国では量産決定、実戦投入の段階。その遅れをイノベーションで挽回し、最終的には世界最高の傑作戦闘機といわれたのが疾風。しかし、飛行機は設計だけではない。プラグやガソリンのちょっとした差、生産能力、補給能力、整備のしやすさなど高いバランスの取れたテクノロジーが勝負。中島飛行機解体後、最優秀のエンジニアらは自動車産業に吸収され、軍民転換で力を発揮。戦闘機由来の水平対向エンジンは私の愛車に引き継がれている。 2023/10/01