内容説明
平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。質感なき時代に「実」を見つめる者たち──圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
815
事件と犯人と捜査を描く通常のミステリに対し、塩田さんは事件に巻き込まれ運命が狂った群像劇を主題とする。未解決に終わった二児同時誘拐事件から30年後、被害者のひとりが画家になったことから若き日に事件を取材した記者が再調査を始め、停まっていた時間が動き出す。思いがけず誘拐された子を預かってしまった夫婦が、情が移った子供を慈しんで育てる前半は息苦しいほどに読ませる。その夫婦をはじめ関わった人びとは、口外できない秘密を抱え必死に生きていく。彼らの苦しさ、切なさが収束していくラストの光景は、まさに魂のドラマなのだ。2023/10/05
青乃108号
719
ちょっとこれは欲張り過ぎの本だと思った。あれもこれも、それこそ「存在のすべてを」ぶち込んだ物語で、どこに焦点が合っているのかわからなくなる。最もフォーカスされるべきは「空白の数年間」の「家族の様だった3人」の過ごして来た時間であろう。それ以外の、特に青臭い若い男女のラブストーリーは余分であって、全体の印象をぼやかしてしまっている。削ぎ落とすべきは削ぎ落として、300ページ程度に纏めてくれたらもっと好印象を持っただろうに。登場人物も多すぎる。憶えられない。ストーリーの展開も右往左往しており、大変読みにくい。2025/08/08
hirokun
623
★4 神奈川二児同時誘拐事件をテーマにした犯罪小説なのかと思って読み始めたが、途中から写実絵画、子供へのネグレクト、家族愛、青春恋愛、美術界の裏幕など様々な要素を含みながら、最後は切ないストーリーを展開している。私の表現力がないため、この作品を読んでの感想がうまく伝えられないのが残念。2023/10/11
bunmei
588
冒頭の2つの誘拐事件から端を発し、その後の30年もの長き歳月における一つ一つの布石がよく練り込まれた、重厚な塩田ミステリー・サスペンス。その分、登場人物も多く、描かれた時代も前後する為に、分かり難さもあるが、ラストで、誘拐事件の裏に隠されていた真相に辿り着いた時、思わず感涙が頬を伝った。作中の言葉「生みの親より育ての親」が本作の根底に流れ、親子の絆とは何かを問いかけてくる。一方で、芸術作品の裏にある画壇における醜い派閥争いも垣間見れ、それが背景にある事で、アート・ミステリ―としての面白さも加味している。2024/03/25
うっちー
560
これは面白い。本屋大賞候補一番手と思います2024/02/21
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