内容説明
期待されながら伸び悩む若手刑事たちの元に、警視庁本部から送りこまれる謎の男、向井光太郎。捜査上の失態を悔やみ、男社会での自身の立場についても苦悩する女性刑事。取り調べ係を目指しながら、容疑者である有名俳優相手に苦戦する刑事、尾行が苦手な刑事。彼らそれぞれに的確なアドバイスを与えるその男は、警務部人事二課所属だった。経験を積み、本部の捜査一課所属となり出会った三人は、向井との関わりを語り合い、彼の知られざる過去を探り始める。彼の過去と三人が担当する女子大生殺害事件が交錯し、見えてきた思いも寄らぬ事実とは?/解説=古山裕樹
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
題名からすると堂場さんのスポーツものかと思いきや警察ものでした。主人公は人事課所属の部長刑事で所轄に派遣されてきます。二部構成になっていて、一部では将来性ある若手の刑事を補佐する役目が中心となっています。二部ではその補佐を受けた人物たちが同じ部署になりその補佐してくれた人物の過去を探り出そうとします。いままでとは異なる堂場さんの警察小説ですが、やはり楽しめます。シリーズ化はしないのでしょうね。2023/10/27
タケチヨ
27
堂場先生初読み。前半は若手刑事たち3人の話でリーダーとしての立ち振舞い、取調べや尾行捜査の難しさに苦戦する彼らに的確なアドバイスをする謎の男向井とのエピソード。後半は成長した彼らが向井を巻き込んで1つの殺人事件の解決に奮闘するという内容で中々面白い構成だと思った。スポーツ界などで使われがちなコーチという単語だが先輩から後輩への技術継承という点で言えば本作のような警察に限らずとも一般企業にも必要な存在なのかもしれない。教え子である刑事たちの劇的な成長ぶりがそれを物語っている。2023/12/25
座敷童
13
実際にどの職場でも技術の継承というものは上手くいっていないことが多い。特に職人と言われる世界ではその傾向が顕著である。当然刑事も職人と言えるだろう。機械に任せられないのであるから。 このような「コーチ」が本来なら熟練者から若年層に継承されるはずであるが、実際の現場では様々な理由から行われていない。 今作は創作の世界の話かもしれないが、現実社会においても実現できれば素晴らしい効果を生むものであると確信できる。2023/11/11
ツバサ
12
能力があるが、燻っている刑事の背中を押すコーチ的存在である向井が非常に魅力的。だからこそ、背中を押され、花開いた刑事達が向井のために動く展開は人情味があって良かった。人を導くのは簡単ではない。ブログにてhttps://wing31.hatenadiary.jp/entry/2023/10/31/2100002023/10/31
coldsurgeon
10
若手刑事の成長を助ける中年刑事の言動と事件捜査を描き、さらに成長した刑事たちが、恩返しのようにその中年刑事の活躍の場を作り出そうとする二部建ての物語。アスリートにおけるコーチと選手との関係とは少し異なり、言葉のキャッチボールがうまく互いの成長を促す。職業人としての変化と成長がテーマだ。面白い警察小説だ。2023/12/10