内容説明
生活史研究で知られ、大阪と沖縄、そして音楽に魅せられた社会学者が綴る、発見と内省、諧謔と哀切に満ちた日記。ウェブマガジン「考える人」の人気連載に、最愛の猫とのかけがえのない日々を書き下ろした「おはぎ日記」を併録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
79
登場人物は、きし(著者)、おさい(パートナー)、おはぎ(猫)、きなこ(猫)。散歩して、猫をなでて、本を読んで書く著者の「にがにが日記」(2017年4月‐2022年8月)と、猫のおはぎの介護生活を記した「おはぎ日記」。認知症が進行し、自分でトイレの場所まで行かずに、ところかまわず粗相する「おはぎ」。寝たきりになったおはぎを寝かせているときに、リビングのステレオで坂本龍一の「hibari」をよくかけていたという。その介護の日々と最期の看取りを綴った「おはぎ日記」は、ペットロスを記録した傑作といってよい。→2024/07/23
pohcho
62
基本的に日記好きなので、最初は少しずつ読もうと思ってたのに、面白くて一気読み。年齢が近く同じ大阪出身なので、ずっと知り合いのおしゃべりを聞いているような気持ちに(こんな知り合いおらんけど)。京大の大学院で教えるってすごいと思うけど、お給料は安いのね(国立だからかな?)最近よく言われているように、文系の研究者は大変なんだなあと。最後のおはぎ日記つらかった。こんなに愛されて、おはきなちゃんは幸福だったと思うけど。生活史シリーズはいつか読みたい。2024/01/20
しゃが
48
『にがにが日記』というより岸さんの生活史だった。論考や小説、愛猫家、彼のバックボーンを知らなくても私は面白かったのだろうか、と。だらだら続くように見せて、時折見せる社会学者の深い視点、一人の人として素のやるせなくも温かいまなざしが読ませていく。「おはぎ日記」は家族の名前と入れ替えても不思議はないほど愛情あふれる介護であった、癒されがたい忘れがたい哀切だった、何よりそのことを共有できる人と寄り添いあえてよかった。2024/02/23
青木 蓮友
28
身も世もなく大号泣しながらの読了です。ほんとうに辛い、思い出あいまって辛い、自分で予想以上の揺さぶられでした、はあ。ポッドキャストを聴きはじめたので、これまでの先生を総ざらい。現在と完全地続きの先生を堪能しつつ、わたしより年下から同い年、今の4歳上となぞっていくことで何というかとんでもない親近感。おさい先生への親しみも爆上がり。やっぱり看取りは人間でますからね、どんくまさんの配偶者がおさい先生でつくづくとよかったです。「20分休み」を聴いているせいか、岸先生の「読み聞かせ」みたいになって楽しかったです。2024/08/27
まめた
28
初日の日記で「猫を撫でて年収500万ぐらいになる仕事はないだろうか」とあって、共感のあまり脱力してしまいました。大学の教授になるくらいの人は自分の知性を誇っているのだろうと思っていましたが、一緒に仕事をする人にひけ目を感じたり盛大にスベった話などもあり、イメージが変わりました。「おはぎ日記」は悲しくて、でも、かわいさ愛しさが溢れていて、おはぎさんとの日々の証のように感じました。2024/01/28