創元SF文庫<br> 方形の円 偽説・都市生成論

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創元SF文庫
方形の円 偽説・都市生成論

  • ISBN:9784488796013

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内容説明

数万の暗い部屋を持つアーチ状の7層のフロアからなる、ミツバチの巣のような外観をしたバビロンならぬヴァヴィロン(格差市)。あらゆる信仰とあらゆる都市を見知った人々が理想都市にふさわしい地を求めてさまよう中、一瞬だけ地平線に見出したアラパバード(憧憬市)。天上と地下に永遠に続いていく超巨大建築都市ヴァーティシティ(垂直市)……。カルヴィーノ『見えない都市』と同時期に構想され、SFとファンタジイの女王アーシュラ・K・ル=グインが愛し自ら英訳を手がけた、ルーマニアの鬼才が描く空想上の都市と建築についての36編。/【目次】日本の読者へ/ヴァヴィロン――格差市/アラパバード――憧憬市/ヴィルジニア――処女市/トロパエウム――凱歌市/セネティア――老成市/プロトポリス――原型市/イソポリス――同位市/カストルム――城砦市/・・・・・/ザアルゼック――太陽市/グノッソス――迷宮市/ヴァーティシティ――垂直市/ポセイドニア――海中市/ムセーウム――学芸市/ホモジェニア――等質市/クリーグブルグ――戦争市/モエビア、禁断の都/モートピア――モーター市/アルカ――方舟/コスモヴィア――宇宙市/サフ・ハラフ――貨幣石市/シヌルビア――憂愁市/ステレオポリス――立体市/プルートニア――冥王市/ノクタピオラ――夜遊市/ユートピア/オールドキャッスル――古城市/ゲオポリス――地球市/ダヴァ――山塞市/オリュンピア/ハットゥシャシュ――世界遺産市/セレニア――月の都/アンタール――南極市/アトランティス/クアンタ・カー――K量子市/アルカヌム――秘儀市/私の幻想都市/フランス語版あとがき/スペイン語版まえがき/πへの道――アーシュラ・K・ル=グイン:英語版序文/訳者あとがき/解説=酉島伝法

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

53
健康診断での待ち時間の御供。作者自身が描いた各市の象徴図もシンプルながら忘れ難い。文明の行きつく先の「老成市」と文明が人を幸福にするのかを問い掛けた「原型市」は対比的だ。「同位市」や「等質市」は社会の為の個性や生活様式の均一化が何故、恐れられるのかという事を囁き、「戦争市」は人間の業の輪廻を抉り出す。「秘儀市」は映画『ミッドサマー』のように供物になる光栄と恐怖を心理的に訴え、「山塞市」は山が絡む謎の一端を幻惑的に解き明かす。「モーター市」と「学芸市」は社会風刺が強め。どの短編も魅力に溢れている短編集です。2023/12/09

tonpie

40
1960年代にルーマニアで書かれた、いくつもの偽の都市の生成と滅亡をテーマにした小説。 構成はカタログ的だ。「SF的想像力」が、裸で露出している印象。小説主義=ロマン主義への意趣返しと評価することもできよう。それが「クール」ということなのか、私には分からない。 「感情移入」というものを受け付けないように意図して書かれた「小説」。そんな「小説」作品に、どう入り込んだらいいのか、大変難問である。そのためか、いくつもの短編に、都市に「入り込もう」とする衝動にかられた人物が登場する。↓ 2023/12/04

塩崎ツトム

25
天子の展望を書いたのが「大説」、個人の実存を書いたのが「小説」と置くなら、都市というのはその中間を揺蕩う創造物になるんだろう。そこが都市の不安定さに繋がっているのではなかろうか。君主は都市を絵のようにつくろうとするが、そこの住民は名もなき民草であり、いつもこの二つの人々の力に引き裂かれようとしている。無謬で不変の都市を造ろうとしても、すべてはやがて砂に埋もれる。ならば代謝する都市ならば? しかしその試みが成功したことはない。ああ、永遠であり、なおかつ生きている都市はどこかにないものか?2023/10/02

新田新一

18
あまり読む機会のないルーマニアのSF。36の架空の都市が、豊かなイメージを使って描かれています。天井と地下に永遠に続いている「垂直市」(61ページ)のように斬新なアイディアに基づいた物語も多いです。興味深いのは、どの都市も何かが起こって、あっけなく滅びてしまうことが多いことです。一番の好みは123ページの「夜遊市」です。湖のある森のように見える都市で、夏至の夜に住人たちが海の中へ散歩に出かけます。この世界にずっと浸っていたくなるような美しいイメージを感じる物語でした。2024/01/24

Porco

16
淡々と書かれる様々な架空都市の記録。しかも時代も各都市の基盤が地球なのか異星なのかすら曖昧なとても不思議な本。作者の言うようにジャンルとしては小説なのだけれど前述したように、各掌編が独立しておりパッと開いたページの掌編を読む詩集のような楽しみ方ができる。2編目のアラパバード(憧憬市)も締めの「そうして束の間、人々は熱烈な偽りの至福に包まれる」が幻想的な美しさがあり一気に興味が出たが、モートピア(モーター市)のようにゴアで残酷な話もあったりと、話の内容もバラエティに富んでおり気軽に開いて何度も楽しめた。2023/10/15

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