内容説明
夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身――。明石家の主である新平は散歩が趣味の健啖家で、女性とのコミュニケーションが大好き。妻は、そんな夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男は恋人が男性の自称・長女。三男はグラビアアイドル撮影会を主催しては赤字で、親に無心ばかり。皆いろいろあるけれど、「家族」の日々は続いてゆく。そんな一家の日常をユーモラスに、温かな眼差しで綴った物語。解説・木内昇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ショースケ
148
インパクトのある一冊だった。明石新平89歳、妻英子88歳。息子3人は未だ独身。毎朝決まった体操、食事のルーティーンをこなし、1人散歩に出かける。思うままに歩き、喫茶店に寄り、薯蕷饅頭を買って帰る。新平の日々は前途多難。妻は認知症、長男は引きこもり、次男はオネエになり、三男は借金まみれ。若き頃の新平の浮気を思い出し、毎朝『女のところに行くのだな』と老いた妻にネチネチ疑われながら家を出る。現代の話題性がてんこ盛りな一家だが、藤野氏は明るくユーモラスに新平の日常を描く。考えさせられ、そして楽しい読書だった。2024/02/25
モルク
133
夫婦の年齢を合わせると180歳。夫婦のなれそめ、妻の姉の家に居候した新婚時代、会社を興し家も新築と家族の歴史が刻まれる。が、3人の息子たちは50歳近いがいずれも未婚、長男は引きこもり、次男はゲイ、三男は親に借金まみれで親に金の無心をするはで問題だらけ、さらに妻が認知症の気配で夫の浮気を疑うと追い打ちをかける。主人公のじいさんは散歩をしながら喫茶店やレストランで洋食をがっつり食べる。それがじいさんの至福の時間。普通でない家庭の普通の時間をコミカルに描く。今を楽しむじいさん。それっていいね。2024/01/24
昼寝ねこ
122
明石新平89歳、妻の英子88歳。3人の息子たちは50歳前後にして揃って独身。しかも引き篭もりとLGBTと借金まみれ。妻は認知症気味。絵に描いたような80-50問題の当事者だ。建設会社を興してそれなりに成功した新平だが老後の生活はあまり幸福ではないようだ。だが新平はへこたれてはいない。毎日のように散歩に出ては女性にちょっかいを出すエロ爺ぶりだ。当然妻には浮気を疑われている。多少の金銭的余裕があるからできるのだろう。しかし最後の場面では自らの人生への覚悟を示す。淡々とした描写ながらコミカルで味わい深い物語だ。2024/02/03
ふじさん
110
夫婦合わせて、180歳を超える老夫婦。今なお、頭の痛い問題が山積み。引きこもりの長男、スカートをはく次男、借金まみれの三男、いずれも未婚で孫はいない。夫の新平は、50前後の同居の面倒を見ながら、認知症の症状が見受ける妻の言動に気を揉む日々が続く。他人ごとではない現実を付きつけられる内容だが、失敗続きの課題満載の人生を優しく肯定してくれる描き方に心が救われる。ユーモラスなタッチで家族の辛い日常をサラッと描くことで、読んでいて心に安らぎを感じる作品。どんな老後が幸せなのか、改めて考えさせられた。 2024/12/14
niisun
109
藤野さんは『君のいた日々』に続き2冊目ですが今回も良かった。60歳前後を“アラ還”なんて言うから、この作品の主人公は“アラ卒”とでも呼ぶのかな?齢90歳のじいさんが、認知症が始まった妻や50歳独身の息子3人に囲まれた問題多めの家族の中で、ひとり散歩を楽しみに生きる日常を軽快に描いた作品。さすがは芥川賞、野間文芸新人賞の受賞作家だけに、何が起きるわけでもない日常を味わい深く描いています。私も散歩が大好きで、30代の頃は暇さえあれば、ひとり街を歩き、手頃な酒場で一杯引っかけていたのを懐かしく思い出しました。2023/08/31
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