内容説明
少年だけが、全てを見ていた……
帆村財閥の異端児・建夫が葉山に設立した私設宝石博物館――収蔵品の剣・銃・斧を使い、長女・光枝の三人の恋人候補が次々殺されていく。
「なぜ三重密室を作らねばならなかったか?」Why(理由)を問うユニークな“密室動機講義”から導かれる、仰天の真相とは?
昭和が終わった年/新本格勃興期、新書ミステリの雄が放った、稚気と本格推理への愛全開の熱き挑戦状(ラブレター)。
解説 今村昌弘
イラスト やまがみ彩
〈目次〉
プロローグ
第一章 トプカプの短劔
第二章 葉山で見た男
第三章 コルト・バントライン・スペシャル
第四章 ぼくは目撃者
第五章 彼女をとりまく男たち
第六章 ウルの黄金闘斧
第七章 名探偵二人
第八章 あらかじめの告白
エピローグ
後がき
解説 今村昌弘
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
90
これまでの中ではビックリ度は低いかも。まあね、読めば読むほどこちらも期待してしまうのも仕方ないか。でも、ちりばめられた伏線、そして見事な回収はさすがカジタツさん。予想外の着地でそこは面白い。宝石館で起こる連続殺人事件。被害者の男たちの共通点は長女への想い。館の隣に避暑に来ていた一人の男の子が書く日記が挿入されながら物語は展開。少年は見ていた!のごとくここは面白い設定。少年の家庭教師の女子大生推理が刑事もお手上げ、いや丸投げ状態の見事さで思わずツッコミ。そうだったのか劇場を今回も堪能。2023/09/02
yukaring
69
少年の日記をメインに語られる事件は「宝石館」と呼ばれる館で起こった惨劇。幼い語り口と怪奇的な悲劇のミスマッチが独特の味を出している物語。私設の宝石博物館に集まった人々が収蔵品の剣・銃・斧で次々と殺される。不可思議な密室に皆が頭を悩ませる中、宝石館の長女・光枝をめぐる人々の対立や最高の価値を誇る六角ランタン・エメラルド、被害者のポケットから見つかった不気味な藁の人形などが警察をはじめとする人々を混乱の渦に叩き込む。「なぜ密室を作らねばならなかったのか?」作者の仕掛けるユニークな罠に是非はまってみてほしい。2023/09/06
Nyah
45
カジタツ。やっぱり分かんないよ。探偵が一番最初に殺される話。/葉山の祖母の家で毎夏を過ごしていた鶴山芳樹少年。今年の夏は、祖母宅で自分が使う部屋から見える景色が大きく変わり、変わった形の建物が沢山建っていた。これは帆村建夫が作った私設宝石博物館だった。帆村邸に宿泊していた男達が宝石博物館収蔵品の剣・銃・斧を用いて密室で殺されていく。美しい帆村家の長女光枝の心を独り占めする為の犯行なのか?犯人に踊らされる刑事の推理、芳樹少年の日記、芳樹の家庭教師久美子先生の推理が光ります。2023/10/09
geshi
30
昭和の推理小説としてはチャレンジングなことをしているんだけど、読み心地が軽いのがどうしても気になった。少年の日記が挟まれる構成は良いとしても、容疑者達の昭和ただよう「今どきの若者」感キツいキャラクターや、警察を出し抜く素人探偵のやりすぎな行動が軽さを余計に強く印象付ける。ミステリマニアこそ手玉にとられる密室のホワイダニットは成程と唸らされる面白さ。日記の一つの場面が伏線となっているが、それ以外であまり効果的とは思えなかったが、あとがきを見るとここが出発点だから必要なのよね。2023/09/21
だるま
20
葉山宝石館と名付けられた個人の洋館で次々に起こる殺人事件。密室もあるが、著者の狙いは密室そのものでは無いとの事。警察と素人探偵が真相を解明しようとする。間に少年の日記が挿まれ、これが何とも意味あり気なのだが・・・。読んで成程ねと感心。これはちょっと気付かないよ。伏線も巧いし、密室がメインで無いという意味とか、一つ一つが腑に落ちた。1989年の作品で、当時は著者に興味が無くなってスルーしていたが、勿体無かったな。でも、本文に「ナウにきまったビーチ・ギャル」なんて書かれていて、今読むと相当キツい所もあるなあ。2023/08/26