ちくま新書<br> 創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界

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ちくま新書
創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界

  • ISBN:9784480075758

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内容説明

何も閃かない、ネタ切れ、考えが浮かばない、アタマが硬い、センスに自信がない……。悩んでいてもいいアイデアは湧いてこない。それはふいに降りてくるものだ。従来の科学モデルでは説明できない想定外で不気味なものを思いつき、作り出そうとする、計算不可能な人間の創造力。それはどこからやってくるのだろうか。生命科学、哲学、文学から芸術理論までを自在に横断し、著者みずからも制作を実践することでみえてきた、想像もつかない世界の〈外部〉を召喚するための方法。

目次

はじめに/第1章 「天然表現」から始める/1 外側と外部/インスピレーションを受け取る/外部と外側/2 創造性はどのように考えられているか/ボーデンの創造論/価値の無際限さ/3 いやぁ死ぬこと思い出して眠れなかったわ/死の感覚/スティングの脂汗/4 トラウマと暴露療法/トラウマとストレス障害/津波におけるサバイバーズ・ギルト/持続暴露療法/暴露療法に抗う二重の困難/5 創造とトラウマ、死の問題/朝の喧騒に茶を喫す/創造と癒し/第2章 外部へ出るために/1 「ただ並べよ」という声/「とりあえず」の積極性/見たいものだけ見る・見たいように見る/書き割りと外部/2 想定外へと踏み出す/蕎麦かラーメンか/蕎麦とラーメンの脱色/3 トラウマ構造/肯定的矛盾と否定的矛盾の共立/肯定的矛盾の効用/4 アートと日常/デュシャンの芸術係数/初めて食べるラーメンの意味/第3章 作品における穴/1 小説に見出されるトラウマ構造/「意味」という綿毛/読書という降霊儀式・小説というその装置/2 吉行淳之介の短編/「いのししの肉」に流れる日常/「いのししの肉」の構造/「いのししの肉」に見出される否定的矛盾/作家が構成するトラウマ構造/3 保坂和志『ハレルヤ』における「キャウ!」/和菓子のように眠る猫/経験と理念の出会い、そして脱色/時間を変質させる「キャウ!」/一日一日という永遠/4 作家性という当事者性/完璧さと不完全さ/穴の積極性/第4章 脱色された日常/1 箱庭的な記憶/庭の記憶/虫たちの記憶/誰もいなくなった庭/2 一人称と三人称の捩れ/記憶の人称性/一人称的身体と三人称的身体/異質な身体の間の結び目/3 天然表現の場所へ/人の時間・物質の時間/日常が成立し、日常が成立しない/はじまりのアート、その種/脱色される遺品/第5章 虫でも人でもない痕跡/1 並べ、折り畳み、脱色する/虫たちの振る舞い/こけしを並べる/ハンカチと靴下の作り出す表面/2 岩松の中のオオミミズ/岩松のジャングル/喪服を引きずり、まるめ、自ら進む/家屋の中の虫ども/3 皮膚をむしるように段ボールをむしる/大量の段ボール/ がし、引き裂き、ちぎる/4 ギャラリーで展示する/空いている地下室/動画・写真・インスタレーションへ/インストール/5 作ってみて確信された/生成の起源とはどのような問いか/当事者における確信/第6章 完全な不完全体/1 芸術は科学と同じなのか/フォーマリズムからミニマリズムへの変遷/形式(形相)か物質(質料)か/作家は何を見ているのか/科学の見るものと芸術の見るものの違い/2 記号としての芸術の死/記号化・貨幣化/芸術の死、はたして/人間中心主義批判/3 現代思想は芸術を救うのか/自然を取り込むことは可能なのか/現代思想における脱構築/外部を感じる者・感じない者/4 完全な不完全体が担う作家性・当事者性・「わたし」/「完全な不完全体」の射程/アガンベンの論じる作家性/完全な不完全体における作家性/作品の制作・鑑賞の当事者性と「わたし」の当事者性/第7章 痕跡候補資格者/1 今世紀最大の無名の画家/書き割り少女/書き割り少女と世界拒否/ピロスマニと書き割り少女/2 なんだか、わからないが、「できた」/針金に苦闘し「穴」を見出す/九州へ上陸/シャルル・フーリエと天然知能/3 フーリエの日々/過去を持たない痕跡/痕跡・すでにして生命/痕跡候補資格者の実装/4 『フーリエの日々』の日々/鳥なのか虫なのか/鑑賞者は「外部」をとらまえるか/科学から芸術へ・ではなく・芸術から科学へ/第8章 創造性はどこからやってくるか/1 芸術鑑賞としての天然表現/鑑賞としての制作/2 自然科学の天然表現/カウンターライトニング/思いつきで何が悪い/意識を突破する可能性/3 日常に広がる天然表現/課題を解いてみる/「いき」の構造/外部を召喚する日常の哲学へ/「賭け」に対するホドロフスキー/参考文献/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Tenouji

17
この書を読む限り「働かないおじさん」は「何かに賭けている」とも言えるかもしれないと思えてくるw。もしくは、生物学における性の存在の根拠は、この「創造性」の実装に他ならないのかな。2023/12/30

Bartleby

15
本書は一言でいえば「創造入門」。 AIに代表されるような、閉じた知能というものがある。 そして、その陰画としての、未知。 しかしそこにはまだ創造はない。 創造の種は、まったく予想もしなかったような「外部」からやってくるのだ。 この外部をいかに戦略的に招き寄せるか。その仕掛けをいかに作るのかを本書では論じる。ユニークなのは著者自身が美術作品づくりを実践していることだ。ここ数年読んだ中でもっとも刺激的な内容の本だった。2024/01/24

武井 康則

11
生物の創発等を研究している著者は、創造のメカニズムを考え、自ら芸術表現を創造してみようと行動する。同時にその思考過程、記録を取り、本書とした。自分を超えるモノを創造するなら、それは外部から来なければならない。来ただけでは形にならないから、自分と違うものと対峙し同時にそれが自分にならなければならない。各レベルで二項対立が起こり、矛盾が生じるわけだが、それはつまり弁証法ではないのか。また、芸術作品の方法論とはマニュアル、フォーマットであり、それが確定した時点でその芸術作品はもはや二番煎じになって→2024/12/15

Ex libris 毒餃子

10
読めば読むほど理解できない。妹に「とうとうおかしくなった」と言われるのはわかる。2023/09/16

sk

7
刺激的な創作論。芸術だけでなく、科学や社会運動までと射程が広い。2023/09/03

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