内容説明
ウクライナは、国内で人気のSNSがロシアのサーバーにホストされているほど「サイバー意識低い系」だったが、二〇一四年にクリミアを奪取され、その後もロシアによる攻撃が止まない現実を前に徐々に覚醒していった。政府データのクラウド化など防御策と、米軍や大手IT企業との連携、IT軍の創設などの攻撃策を組み合わせ、ロシアと互角以上に戦っている。サイバー専門家によるリアルタイムの戦況分析。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
59
新刊。 最近、日本でも新幹線や銀行のシステム異常あるので、もしかしたら?なんてやや心配。 ウクライナは備えが凄い。 台湾のオードリー・タン、今年6月のテルアビブ、サイバーセキュリティ会議で基調講演したそうで、健在でうれしい。2023/10/26
佐々陽太朗(K.Tsubota)
53
あらためて危機感を抱いたのは、ロシアから見て日本はウクライナ支援国であり、ロシアによる報復攻撃があり得るということ。現状の我が国のようにのほほんとしていて良いはずはない。特定機密保護法の制定に反対し、セキュリティークリアランス制度の必要性すら理解できないレベルの国民、憲法9条の先進性を称え戦争反対ととなえていれば平和でいられるなどという戯言にすがり、思考停止状態を七十年以上続けてきた国民に、ウクライナが今闘っているように理不尽な侵攻に抗う能力と覚悟があるとは思えず暗澹たる思いだ。2024/08/02
kk
22
図書館本。著者はかつて防衛省でも勤務したことのある気鋭のサイバーセキュリティ・エキスパート。クリミア併合から今回の侵略までを対象として、ロシアのウクライナに対するサイバー攻撃の実態、民間事業者などを含むウクライナ側の対応状況、西側諸国によるサイバー面での支援の経過や双方のサイバー・ボランティアの活躍ぶりなどを丁寧にルポ。将来あり得べき台湾有事へのインプリケーションや、この分野での日本の課題などにも話題が及びます。全体として親切で要を得た説明ぶりという印象。極端なものの言い方をしてないところも好印象かな。2023/12/25
チェリ
12
現在進行形の戦争におけるサイバー攻撃がどの様なものか、ライブ感の濃い内容になっており、DDoS、ランサムウェア、ワイパー攻撃の応酬について知ることができる。ウクライナ政府は、政府の情報(戸籍など)をAWSに保存することを決意したが、他国のクラウドサーバーに国家の最重要情報を渡すのは勇気のいる行為だったろう。一方、ロシアはロシアでデジタル人材不足を、服役者にリモートワークさせるという離れ技でカバーしており、非常時の対応力とは凄まじい。個人での活動も目立ち、国益に繋がれば違法行為でも免責される、非常識な世界。2023/09/18
やすお
10
報道ではミサイルや戦車、ドローンといった実弾系による戦争の状況が伝えられることが多い。本書はサイバー攻撃という観点でウクライナ戦争を俯瞰する。どちらかというと、サイバー攻撃に詳しくない人が、サイバー空間での戦争ってどういうものなのかを理解するのに役立つと思う。逆に、セキュリティに詳しい人は知っていることなども多く、オープンな情報をまとめた感じがして物足りないかもしれない。新書らしく、現状をさくっと知る読み方をすべきで、そういう意味では、ウクライナ戦争の真っただ中の今でこそ読むべき本なのだろう。2023/11/22