内容説明
気鋭の批評家が、「一個の生」をキーワードに私たちの生きる態度を問う、渾身の一冊!
「前近代と近代」「戦前と戦後」につづき、3.11の「その前」と「その後」という、第三の時代の裂け目を体験した私たち。社会の形が一変した後の「新しい時代」に、人はどう生きていくべきか、文学はいったい何ができるのか。近代化の中で、個であることの宿命的な孤独を自覚したのが夏目漱石であり、戦後日本の中で、数多くの作品を通して個のありようと格闘したのが大江健三郎であった、と著者は言う。個の分断を防ぐために――。漱石、大江をつないで3.11後の時代を文学から見通す。
はじめに 「新しい時代」から「新しい時代」へ
第1部 百年の淋しさ――漱石『こころ』からの呼びかけ
第2部 後れてきた者の遍歴――大江健三郎の戦後
第1章 戦後という「新しい時代」の発見
第2章 六〇年安保と主体回復への葛藤
第3章 戦後の総括の試み
第4章 損なわれた生の救済と再生
第3部「新しい時代」の文学に向けて――3.11の「その後」をどう生きるか
第1章 3.11が生んだ「その後」
第2章 更新していく生と手渡される生
おわりに たったひとつの個の一回限りの生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
19
明治の近代化を担った漱石、戦後民主主義に生きる希望を見出した大江健三郎、そして3.11の大地震以来の日本のパラダイムシフト(転換期)。そのなかで作家たちは何を考え表現してきたを大江健三郎の文学を中心に見ていく。大江健三郎が尊敬する井伏鱒二『黒い雨』は絶望の中にも自然の生業という行為を見出す。また戦後、大江健三郎が感銘したのはアメリカ文学の「ハックル・ベリーフィンの冒険」だった。そこに希望の文学という絶望する世界にも光を見出してゆくのが大江文学と読むのだった。初期短編が紹介されているので入門書としていいかも2023/11/03
原玉幸子
17
「社会の転換点で文学が変わって来た」とは頷ける解説。「近代的自我の目覚め」と「戦争」が大きな転換点であり、その代表作家が夏目であり大江であることは、自分で思っていたことだったので正直嬉しかったのですが、「戦争の次の転換点は3・11だった」との著者の視点は意識はなかったです。大江以降の変容は、ここ!との転換点ではなく、個人や社会のだらだらとした変化の中で、例えば、ポストモダンとの切り口に紛れてしまった、と感じていました。それがどういったものかを探求したいとの思いは、アプローチの練り直しが必要となりました。2023/09/23
たろーたん
0
印象深かった評論は、夏目漱石『こころ』と多和田葉子『献灯使』である。『こころ』は、友達Kを出し抜いてお嬢さんと結婚する先生の話。先生は、こうした自分の振る舞いは他者を顧みない「利己心の発現」であることを知る。このように、「人は内面の自由を希求しながら、自分であるとはどういうことなのか、そのために、何が獲得され、何が犠牲になるのか知らなければならないのか」というのが、漱石のテーマの「近代的自我の苦悶」である。(続)2024/02/29
rikoxyma
0
「どうすれば時代の困難に抗し、損なわれた個と社会を再生する新しい生を生きうることができるのだろうか」2023/12/11
-
- 電子書籍
- セックス依存症になりました。 分冊版 …
-
- 電子書籍
- オフ会に行ったら推しアイドルと出会って…
-
- 電子書籍
- 会社四季報の達人が全力で選んだ 10倍…
-
- 電子書籍
- ネガティブな毎日をポジティブに変換 も…
-
- 電子書籍
- noicomi vol.02 noic…