内容説明
母から息子への痛切な願い。手紙に秘められた真相は!?
手首を切断された女の死体を名古屋の下宿に残して長男が失踪。
事件の第一発見者は、奥飛騨の寒村から長男を訪ねてきた母親だった。
息子の無実を訴える母と、大学受験を控えた次男との間で交わされる手紙が、やがて驚愕の真実を浮き彫りに……。
著者ベスト級の呼び声高い表題作ほか、騙りの技巧を凝らした中編三本を収録。極上の本格ミステリ集!
初文庫化を記念して、ミステリ作家・阿津川辰海氏とのロング対談を特別収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yukaring
65
母と子の往復書簡や独白、日記を中心に成り立つ『村でいちばんの首吊りの木』や『街で一番幸福な家族』またなんと無生物の語りによって謎が明かされる『島で一番の鳴き砂の浜』など語りに技巧を凝らしたトリッキーな3編。「息子は犯人ではない!」手首を切断された女の死体、その女性の交際相手だった息子が失踪し母は必死に息子の無実を訴えるが・・。母親と次男による手紙のやり取りから見えてくる驚きの真相。表題作は辻マジックが冴え渡る巧みなストーリー展開。あとがきで辻ミステリの裏話を語る辻さんと阿津川さんの対談もとても面白かった。2023/09/30
ヒデキ
55
絶対に読んだことがあると思われますが、 思い出せない本でした。 辻さんの作家・脚本家としての全盛期の腕を見せて頂いたような気がします。 それぞれの時代の様々な人物を描写が、印象深かったです2023/08/26
アーちゃん
53
まず構成が面白い。表題作(1979年小説推理掲載)、「街でいちばんの幸福な家族」「島でいちばんの鳴き砂の浜」(以上1986年発表)、年代別あとがきを古い順にABCとした「大人でいちばんの子供の私」そして巻末の特別対談。本の形式としても1986年単行本、1994年ノベルスときて2023年文庫(なのであとがきも3つ)とバラエティ豊か。表現や言葉は当時のままなので古さを感じるが、書簡に独白と日記、ラストは語りが全部無生物と変わった趣向の中篇三本。2023年5月現在91歳、精力的な著者に敬意を表します。2024/01/24
森オサム
39
1986年発表の中編集。書簡形式や独白形式等、視点を移動させて行く事で、見えなかった真相が徐々に明らかになる趣向の作品でした。また、全ての話で親子の関係が物語のベースに有るのは、作品のテーマに通じる物なのかも知れません。ただ、その子供たちの話し言葉に余りにも違和感を持ったけれど、自分が40年前の事をもう忘れてしまったからなのでしょうか…?。それぞれの話は捻りが効いていて面白く読めましたし、三度書かれたあとがき、著者と阿津川辰海氏との対談も楽しめました。十分おススメ出来る「隠れた名作」。2023/12/16
らすかる
30
表題作を含む3編の中編集。言葉遣いの古さも気にならないくらい筆力ありますね。短すぎず長すぎず、気楽に昔のミステリーなどを読んでみたいって時に良いかも。2024/01/06