岩波新書<br> 読み書きの日本史

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岩波新書
読み書きの日本史

  • 著者名:八鍬友広
  • 価格 ¥1,166(本体¥1,060)
  • 岩波書店(2023/07発売)
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  • ISBN:9784004319788

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内容説明

私たちが日々実践している文字による言語活動は,長い時をへて形づくられてきたものだ.古代における漢字の受容から,往来物による学びの時代へ.近世の文字文化の多様な展開から,近代学校の成立へ.──世界の事例にも目くばりしながら,識字の社会的意味を広くとらえ,今も揺らぎのなかにあるリテラシーの歩みを描く.

目次

はじめに
第一章 日本における書き言葉の成立
文字以前
文字の借用
日本語と漢字
漢字の移入
漢文訓読
変体漢文
宣命体
万葉仮名と仮名
仮名交じり文
さまざまな文体から「候文体」へ
近世における書体の一様性
第二章 読み書きのための学び
習書木簡にみる文字学び
一文不通の貴族たち
往来物の時代
書儀と往来物
手紙文による学習の広がり
ヴァイ文字の学習と手紙
消息から往来へ
教科書的なるものとしての「往来」
第三章 往来物の隆盛と終焉
近世社会と往来物
庶民用文章型往来物
地理科往来物
地域往来物のヒット作『道中往来』
穏当ならざる往来物『直江状』
百姓一揆の直訴状も往来物に――寛永白岩一揆
往来物であることの証明
「目安往来物」というジャンル
異系統の目安往来物
動くテクスト
「読ませる権力」の始動と往来物
書式文例集への回帰
往来物の終焉
第四章 寺子屋と読み書き能力の広がり
寺子屋というもの
民衆への読み書き能力の普及
花押からみる識字状況
村堂というもの
一七世紀の寺子屋
筆子碑からみる寺子屋の普及
一八世紀における越後村上の寺子屋
門弟四〇〇〇人にのぼる時習斎寺子屋
外国人のみた幕末期日本の読み書き能力
寺子屋の教育力
ある寺子屋師匠の嘆き
『山代誌』にみる寺子屋の実態
宮本常一の祖父と寺子屋
村請制と識字
読み書きという実践
読書と教養
分限による教育と文化的中間層
リテラシーのスペクトル
近世日本におけるリテラシーの構造
第五章 近代学校と読み書き
明治期の識字調査
地域内自署率の分布
自署率と識字
長野県北安曇郡常盤村の識字調べ
石川県における徴兵適齢受検者に対する教育調査
岡山県における明治期の識字状況
史上空前の学びのキャンペーン
就学告諭の世界
近代学校制度というもの
学校教育と近世的リテラシーの相克
内容主義の国語教育
読本で教えるという伝統
言文一致体へ
音読の退場と「近代読者」
孤独な読者
おわりに
あとがき
図版出典一覧
主要参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

136
特定のジャンルから歴史を見るのは有効な補助線だが、読み書き能力からとは初の試みか。幕末の来日外国人が日本人の高い識字率に驚いた話は有名だが、実際には男女や地域別で差があって習得の程度もバラバラだったのは、江戸時代に文部科学省はなかったのだから当然だ。しかも主な教材は往来物と呼ばれる往復書簡で、方言の違いが顕著な時代に文章で意思疎通を図るため候文の書き方に重点が置かれたのは、中国語やドイツ語の似た事例を思い出す。長い平和で人びとの学ぶ意欲と工夫が高まればこそ、明治以降の学校教育に接続できた事情が見えてくる。2023/12/10

さとうしん

24
往来物を中心とするリテラシー日本史。往来物の材料として直江状や百姓一揆の訴状といった今の常識では考えられないようなものも使用していたというのが面白い。何かと評価されがちな江戸時代の識字率については、地域差の問題や「識字率」の定義そのものを俎上に上げて、特に幕末の外国人による「世界一」という評価に疑問を呈している。文書を手本とすることや識字率の評価について海外の事例を参考に挙げているのもポイントだろう。2023/07/02

寝落ち6段

19
読み書き、識字能力というのは、大変凄まじいものである。抽象的な文字列を見て、それを具体物に脳内変換できるという人間の素晴らしい能力であり、これにより人類は大きく発展したのは間違いない。先人たちが書き残したものを手習いし、時代が進むと学校制度で学ぶようになる。私が生まれ育った平成時代では、まだまだ筆記で勉強していた。現在はデジタル化が進み、言葉も検索すれば、文章もAIに頼ればと変わってきた。確かに大変便利で、効率的だ。だが、自分で学び考える機会を減らし、思考を頼って自主性を失うのではないかと危惧してしまう。2023/09/23

軍縮地球市民shinshin

14
古代からの日本人の「読み書き」の歴史。ただ著者の専門は江戸時代なので近世の記述が多め。なかなか面白かった。特に「江戸時代の識字率は世界一」というのはかなり疑わしいことがわかった。大都市と地方、男と女でだいぶ識字率に差がある事、そもそもどこまでできたら「文盲」ではなくなるのか、その見分けが難しいと感じた。近世の寺子屋は往来物という手紙用例集を教科書として扱い、社会で役に立つ文章を小さいころから覚えさせていたが、近代学校では学術的・芸術的な文章を読ませていたため、実用度は下がったとの指摘はおもしろい。2024/05/17

gorgeanalogue

13
電子版で。さまざまな教育史研究のパッチワークによって書かれたリテラシーの日本史。面白かったし、頭の整理にはなったが、やはり往来物の歴史(それ自体はとても面白い)に特化しすぎの感あり。行草書から楷書への転換などにも目配りがあるが、それと連動した明朝体活字の画期と漢字かな交じり文について触れないのは惜しいと思われる。近世期日本に深く理解すべき共通のテキストがなかったというのは、どうなのかなあ。それこそ儒教であり漢文だったんじゃないの。昭和初期に綴り方の教師が弾圧されたというのは初めて知った。2023/09/03

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