内容説明
「弱いアメリカ」しか知らない世代の、社会変革の想像力とは?
機能不全に陥る民主主義、「保守」化する社会、脆弱な社会保障、拡大する経済格差――
戦後国際秩序の盟主としてのアメリカが今多くの難題を抱え、転換期を迎える中で、
人口の2割を占める米国のZ世代は、社会変革の主体として注目を集めている。
テロとの闘いの泥沼化や金融危機など、自国の「弱さ」を感じながら育った彼らにとっては、
機能不全に陥る民主主義、拡大する経済格差、脆弱な社会保障こそがアメリカの「現実」だ。
長期的には政治・外交にも影響を及ぼすと見られる彼らは今、
どのような価値観や対外政策への志向を持ち、アクションを起こしているのだろうか?
米中対立、反リベラリズムからジェンダー平等、レイシズムまで。
気鋭の国際政治学者が、アメリカの今と未来をさまざまな角度から描き出し、
私たちの社会や政治の想像力を広げる渾身の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
132
自分たちの正義は世界の正義と信じてきたアメリカに、Z世代は疑問符を突きつけた。テロとの戦いは果てしなく続き、巨大な経済格差が放置され、人種差別や銃犯罪が収まらない現実を直視し、正義を唱えるなら自国の矛盾も根本的な再生が必要との信念に目覚めたのだ。そうした新アメリカ人の改革への意志は強いが、中絶の権利や移民政策などで対立する者を排撃するほど激しくなっている。日本ではトランプ共和党のMAGAばかり報じられるが、民主党も左派の発言力が増して中道派が失われつつある。Z世代が中心となるアメリカの未来が想像できない。2023/10/29
ヒロ
96
現在のアメリカがどんな風になっているか、ホントに詳しく書かれていました。Z世代の視点が主でしたが、どの世代にも通じるような問題や現状があって、やはりアメリカも課題が多く、日本もまた全くの他人事ではないなと思わせられるような一冊でした。今年はまた大統領選挙も控えているので、そういった面でもとても参考にできる内容でした。2024/05/19
ぶ~よん
80
世界1位のGDPを誇る経済大国アメリカは、住む人全ての人にとって幸せな夢の国なのか?知っている人からすれば当たり前だけど、知らない人にとっては、そんな幻想を打ち砕いてくれる、アメリカの現実を直球で伝えている本。社会主義に憧れている側面があったり、中絶の権利が議論され続けたり、日本から見ているだけでは知らない感覚や現実があった。恥ずかしながら、バーニー・サンダースの戦いも知らなかった。タイトルのZ世代を表現しているかと言われると疑問だが、アメリカの現状を分析すると、今後はこうなるという意味で捉えましょう。2024/05/23
Sam
54
本書で取り上げられるテーマは例外主義から始まって反リベラリズム、米中対立、テロとの戦い、人道の普遍化、ジェンダー平等、中絶の権利と続く。いまのアメリカを語るうえで欠かせないこれらのテーマをZ世代の若者たちを引き合いに出しながら論じているのだが、とすれば当然リベラルな目線での評価となる一方で、なるべく偏らずにバランスよく俯瞰しようという著者の姿勢が貫かれているところには好感が持てる。アメリカがこれらの難題を克服し、力強く再生することを期待する著者に賛同したいところだが果たして…2023/08/05
ころこ
42
タイトルのために世代論に寄せている。しかし、論旨はトランプ現象をはじめとした日本からみると「なぜそうなるの?」と首を傾げざるを得ないアメリカ社会の分断について、事象を踏まえて平易に論じている。しかし、本書の慧眼は第1章にあると思う。ここで議論されている「アメリカ例外主義」とは、アメリカは堕落したヨーロッパと違い特別な責務を負っていて、それ故に他国に優越しており、人類史を進歩に導かねばらない使命感のことだ。例外主義は一時のことであり、トランプだけでなく、バイデンもまたイラク、アフガニスタンと失敗から路線変更2024/05/03