筑摩選書<br> 南北朝正閏問題 ――歴史をめぐる明治末の政争

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筑摩選書
南北朝正閏問題 ――歴史をめぐる明治末の政争

  • 著者名:千葉功【著者】
  • 価格 ¥1,595(本体¥1,450)
  • 筑摩書房(2023/07発売)
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  • ISBN:9784480017796

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内容説明

国定教科書の記述をきっかけとして起きた、日本の南北朝時代において南朝と北朝のどちらが正統かをめぐる明治末の論争は、当時の閉塞的な政治状況もあり、重大な政治問題と化した。最終的に政府は危機を乗りこえたが、深刻なダメージを負った。多様なアクターがそれぞれ自分の信念や思惑をもって活動した結果として生じた、深刻かつ複雑なこの南北朝正閏問題を、現代政治における歴史問題・皇室報道問題の原点として徹底的に掘り下げて考察。そこから浮かびあがる近代日本の特質に迫る。 【目次】はじめに/第一章 南北朝正閏問題の背景/第二章 南北朝正閏問題の突発/第三章 藤沢元造の質問に向けて/第四章 大日本国体擁護団と政府弾劾決議案/第五章 桂内閣による「第一の政治決着」/第六章 南北朝正閏論争の構造/第七章 桂内閣による「第二の政治決着」/おわりに/参考文献/言説分析原典一覧/あとがき

目次

はじめに/第一章 南北朝正閏問題の背景/1 喜田貞吉と国定教科書/本書の「主人公」喜田貞吉/喜田の同調者三上参次/教科用図書調査委員会の設置/国定教科書における南北朝の取り扱い方/喜田の著作『国史之教育』の内容/宮内省による歴代表調査/国定教科書の第一期から第二期へ/2 問題が熾烈化した背景/社会主義の取り締まり/野党立憲国民党の閉塞感/貴族院における伯爵同志会の閉塞感/第二章 南北朝正閏問題の突発/1 問題のはじまり/事の発端としての文部省講習会/問題の火付け役峰間信吉/当時の読売新聞が置かれていた状況/南北朝正閏問題のはじまり/早稲田大学漢学者グループへの飛び火/漢学者内田周平の参加/2 藤沢元造をめぐる動き/代議士藤沢元造の登場/藤沢による質問書の提出/藤沢への説得工作の開始/立憲国民党と伯爵同志会への働きかけ/文部省・宮内省の責任問題の高まり/第三章 藤沢元造の質問に向けて/1 質問演説まで/喜田貞吉・三上参次への人身攻撃キャンペーン/南北朝正閏問題と大逆事件の連動/国学者と聖断による決着という方法/藤沢・牧野・松平と喜田・三上の会見/帰省し帰京する藤沢/質問演説日当日/2 質問演説への反応/議員たちの反応/メディアの反応/石川啄木の反応/早稲田漢学者グループの反応/藤沢の弾劾質問失敗から政府の責任追及へ/加藤弘之の独自スタンス/第四章 大日本国体擁護団と政府弾劾決議案/1 大日本国体擁護団/いきり立つ水戸学関係者/大日本国体擁護団の結成/大日本国体擁護団の論理/大日本国体擁護団の檄と講演会/日本弘道会の例会講演/2 政府弾劾決議案へ/貴族院──伯爵同志会の動向/衆議院──政府問責決議案の提出へ/立憲政友会の立ち位置/政府弾劾決議案の採決当日/決議案否決後の国民党と政友会/決議案採決後の各種講演会/第五章 桂内閣による「第一の政治決着」/1 山県の危機感/井上通泰と森 外と常磐会/市村 次郎と賀古鶴所と森 外/ 外の小説「かのやうに」/激昂する元老山県有朋/二グループの訪問者によると/2 「第一の政治決着」へ/山県有朋と寺内正毅の書簡の往復/山県有朋と桂太郎の書簡の往復/南朝正統にかんする桂内閣の措置/南朝正統にかんする文部省の措置/実際の「世論」と文学者たちの反応/「第一の政治決着」を受けて/第六章 南北朝正閏論争の構造/1 正統性をめぐって/「正統」とはなにか/「論争」の特徴とその「構造」/2 北朝正統論と南北朝対立論/北朝正統論/南北朝対立(並立)論/3 南朝正統論/事実上根拠を示さないもの/漢学者グループによる古典的論法/政治家の論法/教育関係者の攻防/菊池謙二郎と笹川臨風/「国民道徳」の強調/de jure/de factoと「実力主義」への反発/国法(法理学)の観点/日蓮宗(日蓮主義)の影響/「官学アカデミズム」第二世代の論法/原理原則主義的な「北朝抹殺論」/第七章 桂内閣による「第二の政治決着」/1 部会での論争/補充された重田定一と三宅米吉/第二部会での激論/教科書調査委員会における議論配置/2 総会から「第二の政治決着」へ/総会でも激論は続く/閣議提出書類から復元してみると/そして、「第二の政治決着」/不都合な事実/おわりに/参考文献/言説分析原典一覧/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

南北

52
読友さん本。1911(明治44)年に国史の教科書での南北朝時代の記述を巡って社会問題となった事件の経過とそこに関わった人物の略歴などの背景を明らかにしている。南北朝を並立して記述する国史の教科書に対し、水戸学や頼山陽の『日本外史』に影響を受けた漢学者たちの反発を受け、新聞各紙もあおり記事を掲載し、帝国議会でも問題となり、編纂に携わっていた喜田貞吉たちは休職処分となる。歴史教育に「あるべき論」を持ち込むのは間違いであり、三種の神器を根拠とする南朝正統論の考え方を受け入れることはできないと思う。2023/10/21

がらくたどん

51
今はワイドショーでも取り上げられる皇室のあれこれ。昔は天皇の話題は軽々しく口にできなかった?多分それ戦時統制下だけかも。「その天皇は正統か?」そんな事を喧々諤々激論沸騰した時代があった。明治期終盤、国定教科書の編集に携わる行政官が足利を賊軍と言い過ぎると北朝の天皇までが「賊の天皇」と誤解されないかと考えた。それに新聞が火を付けた。南北朝期の「天皇」の正統性について北朝正統派・南北並立派・南朝正統派が学者・政治家・在野論客入り乱れ論考・論破に罵りまで侍無き世の忠臣メンタルに酔った明治男が気を吐いたのだ→2025/08/28

MUNEKAZ

16
政府関係者の不用意な一言を在野の人々が問題視し、マスコミが大いに煽って、野党政治家が政治問題化させる。なんとも今日日的な話題な気もするが、100年前の「南北朝正閏問題」の基本構図である。国家による学問弾圧というイメージもあるが、実際は在野の声に押された政府が政治的決着を図ったのであって、一概に上からの強圧的なものとも言えず。また官学アカデミズム発の近代歴史学と、幕末に漢学教育を受けた在野の歴史教育家との相克とも見ることが出来、近世と近代の繋がりの中で、この問題を捉えることもできる。読みどころの多い良書。2025/09/28

ムカルナス

10
明治末期の日本では南朝正統論が主流であったが国定教科書で南北朝並立が記されると官学アカデミズムへの対抗心から早稲田・慶応の漢学者が反発し、商業主義から読売新聞が対立を煽り、国会では野党が現政権攻撃材料とする。当初は誰もスルーしてたネタを反権力に利用できると判ると相手の言論には耳をかさず、曲解してまで自説を声高に叫び続ける・・攻撃のネタは違えど現代の野党やメディアの政権攻撃そっくりである。尊王と言いつつ北朝の末裔である天皇自身の気持ちは無視してるのは戦争に突入する昭和前期の姿に似ている。2023/10/03

maqiso

8
国定教科書を編纂した喜田は歴史教育の見地などから南北朝並立と書いたが、当時の教科書や世間は南朝正統派が大多数で反発が起きた。漢学者や新聞社、桂内閣と対立する野党によって政治問題となる。最初の質問演説はうやむやになったが政府の弾劾や新聞での議論は続き、内閣は南朝正統と決定した。宮内省ではそれまで正閏を未定としていたが、天皇が南朝正統に同意した。北朝を閏ではなく偽とする論者は世間でも教科書改訂の委員会でも少数派だったが、内閣によって北朝抹殺論が取られた。第二の政治決着は研究が進んでないのか唐突に見える。2023/08/15

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