内容説明
豊臣秀吉による築城以来、約440年にわたって歴史上の重要な舞台となってきた大坂城には、有名無名を問わずさまざまな人々が関わってきた痕跡が刻まれている。本書は、天下人や武将たち、数奇な運命に翻弄された女性たち、屏風絵に描かれた民衆などの多彩な人物を通して、大坂城にまつわる史実を多角的に描き出そうとするもの。大阪城天守閣の名物館長として、長年研究・広報活動に専心してきた著者による、大坂城の人物史話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
練りようかん
8
利休やお市の方と三人の娘たちのように、大坂城からすぐ連想する人もいれば、よく知らない人もいて幅の広さに興味を引かれた。秀吉の中華思想で中国移住を考えさせられたのが面白い、ガラシャといつも短い幸せにため息をつき、大坂の陣を予見した政宗の書状が茶人に託されるのが当時の人間的距離感を思わせ、初めて深く知る人物もいて勉強になった。特に印象的なのは真田幸村。実際目にしたものもあるが掲載資料を見ると改めて石碑が多いと思った。それだけ偉人で人気があったということなのだろう。今建設中の施設、豊臣期の野面積みが楽しみ。2024/02/19
わ!
7
もと大阪城館長の北川央さんが、2000年ぐらいから書き溜めた論文を本にまとめた本です。時期も内容も異なっているので、テーマも濃淡ぐあいもまさにバラバラなのですが、それだけにどこかの論稿は面白いと思えるのでは…と思います。私としては幕末の大阪城や、戦中戦後の大阪城も読みたかったのですが、この本では残念ながら、戦国時代の論文に絞られていました。「あとがき」にも書かれていた様に、大阪城は本当にドラマの多いお城だと、改めて思い直しました。2025/05/29
onepei
2
後藤又兵衛の章に興味を引かれた2023/10/01
狐狸窟彦兵衛
1
大阪城天守閣前館長が、折に触れて発表された論考をまとめた本です。講談師見てきたような嘘を吐き、などといいますが、「史実」とされる同時代の記録も随分いろいろあり、「真実」を探るのは難しいのだと知ります。それでも歴史資料から、戦国の英雄から庶民まで、みんな確かに生きていた、という息遣いを感じるよう導いてもらえます。興味深い本です。2023/08/06
NAGISAN
0
北川前館長が過去に発表されたものを編集。大阪城に関連する武将・女中を核として、資料とともに描く。他の小説に取り上げられる重臣にスポットを当てないのはなぜと思いながら、想像するするのも楽しい。地元・堺の南宗寺の家康の墓(大阪夏の陣で討ち死)は、大阪人らしい江戸への対抗意識の表れ。本能寺の変の時に、堺で死んだという話もあるなぁ~。2023/09/28