ちくま新書<br> ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで

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ちくま新書
ウクライナ動乱 ――ソ連解体から露ウ戦争まで

  • 著者名:松里公孝【著者】
  • 価格 ¥1,320(本体¥1,200)
  • 筑摩書房(2023/07発売)
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  • ISBN:9784480075703

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内容説明

冷戦終了後、ユーラシア世界はいったん安定したというイメージは誤りだ。ソ連末期以来の社会変動が続いてきた結果としていまのウクライナ情勢がある。世界的に有名なウクライナ研究者が、命がけの現地調査と100人を超える政治家・活動家へのインタビューに基づき、ウクライナ、クリミア、ドンバスの現代史を深層分析。ユーロマイダン革命、ロシアのクリミア併合、ドンバスの分離政権と戦争、ロシアの対ウクライナ開戦準備など、その知られざる実態を内側から徹底解明する。

目次

はじめに/第一章 ソ連末期から継続する社会変動/1 非工業化/ソ連工業の牽引車/特権的共和国/ソ連解体後の落ち込み/ソ連解体の幼稚な論理/ロシアのウクライナからの脱植民地化運動/クラマトルスク重機械工場のささやかな抵抗/貧困とポピュリズム/旧ソ連人の期待を裏切る西側経済の停滞/賄賂の国の反汚職革命/比較優位説を拒否したロシア/若者を前面に/戦争と輸入代替/まず戦争、それから社会革命/ロシア軍がオデサに突進した経済的背景/2 分離紛争/民族領域連邦制/マトリョシュカ連邦制/先住性重視と原初主義/「長兄」要求に苛立つ基幹民族/実施されなかった一九九〇年四月三日連邦離脱法/uti possidetis jurisの適用/国家の継承性を否定することは領土保全上の自殺/ソ連解体を急いで追認する国際社会/親国家(旧連邦構成共和国)に有利な国際法解釈/なし崩しだったソ連解体/3 安全保障/ウクライナ独立のトリック/クリミアをめぐるウ露対立/多文化国家の存続条件/ロシア指導部の小ユーラシア主義への転換/残るソ連の御威光/ウクライナ中立政策の挫折/三角パートナーシップの問題点/カラー革命とNATO問題のイデオロギー化/黒海艦隊問題/シリア戦争とロシアのレトリックの過激化/NATO加盟がウクライナ憲法条項に/本章のまとめ/地図 ウクライナ南部/第二章 ユーロマイダン革命とその後/1 ユーロマイダン革命の見方/新帝国主義論/実存主義的アプローチ/2 ウクライナ内政の地政学化/政治の両極化の危険/最初から両極化していたわけではないウクライナ政治/最初に左右対立を地政学化したのは東部/ユシチェンコの争点逸らし/ユーロマイダン革命前夜の政治状況/3 ユーロマイダン革命/EUアソシエーション条約調印の延期/一一月三〇日未明の暴力/二月一八日「平和攻勢」/二月二〇日、スナイパー虐殺/ヤヌコヴィチの逃亡/二月二二日、南東ウクライナ・クリミア各級代議員大会/ユーロマイダン政権の成立/二〇一四年ウクライナ大統領選挙/4 失敗した沈静化の試み/ハルキウ蜂起の失敗と「反テロ作戦」/オデサ労働組合会館放火事件/分離主義には踏み込めないオデサ/五月二日の惨劇/不幸な事故か、計画殺人か/ソーシャル・メディアの効果/五月九日、マリウポリ事件/5 ユーロマイダン後のウクライナ政治/二〇一四年、最高会議選挙/ヤツェニュク首相からフロイスマン首相へ/議会前テロ/脱共産法/二〇一五年の地方選挙/ポロシェンコの苦境/「軍、言語、信仰」/ウクライナにおける正教会の統一問題/民族派正教会の合法化/露ウ開戦後のウクライナ正教会/野党ブロックの盛衰/ゼレンスキー旋風/大統領と首相/分権改革と二〇二〇年地方選挙/市長党の時代/本章のまとめ/第三章 「クリミアの春」とその後/1 二〇〇九年以前のクリミア/諸帝国の真珠/クリミア自治共和国の復活/ウクライナの独立と一九九二年クリミア憲法/一九九四年大統領選挙/メシュコフ時代/クリミア・タタールとメジリス/クリミア・ムスリム宗務局/正常化の時代/グラチとクニツィンの左右連合/オレンジ革命とクリミア/クリミアの多極共存型デモクラシー/2 マケドニア人支配下のクリミア(二〇〇九─二〇一四年)/継続する多極共存政治/ジャルティの辣腕が多極共存政治を解体/ジャルティの死とマケドニア人支配の継続/ジャルティのクリミア・タタール政策/モギリョフのクリミア・タタール政策/ロシア人政党の苦境とアクショノフの台頭/3 ユーロマイダン革命とクリミア/革命がエリート内対立を激化させる/暴力の激化とクリミア人の変化/コルスン・ポグロム(集団暴行)/ヤヌコヴィチの逃亡とプーチンの決意/二月二六─二七日の政変/三月一六日住民投票/住民投票結果の法的含意/4 ロシア支配下のクリミア(二〇一四─二〇二二年)/ロシア編入を後悔していないクリミア人/ウクライナによる兵糧攻め/観光の復興/建設ブーム/統一ロシア党の一党優位/共産党の苦境/アクショノフ長期政権の秘訣/アクショノフと連邦政府/メジリスの消滅/ロシア支配を受容したムスリム宗務局/本章のまとめ/地図 ドンバス地方/第四章 ドンバス戦争/1 ドネツク州の起源/ドン・コサック/ドンバス産業革命/ソ連の工業化とドネツク州/2 ソ連解体後のドネツク・エリートの苦闘/ドネツク州における共産党支配の終焉/赤い企業長/政党政治の始まり/一九九四年地方選挙─ビジネスマン知事の進出/地域閥闘争の激化/オリガーク政党の乱立と大統領選でのクチマの苦戦/二〇〇二年議会選挙が誇示したドネツク・エリートの強さ/二重の 奪感をバネに/3 オレンジ革命と地域党恩顧体制の完成/勢力を増した地域党/表に出てきたアフメトフ/シシャツキー知事時代/ユーロマイダン革命前夜の閉塞感/4 ユーロマイダン革命とドンバス革命/失われたチャンス(二〇一四年二─三月)/初期の抗議行動/無力なウクライナ愛国派/タルータ知事の任命/ドネツク人民共和国の誕生/人民共和国最高会議の成立/近未来ウクライナ大統領に秋波を送るプーチン/独走する人民共和国/ドネツク空港空爆/5 平和でも戦争でもなく/聞きわけのない知事たち/民間砲撃の伝統/ノヴォロシア運動の地理的限界/本章のまとめ/第五章 ドネツク人民共和国/1 先行する分離運動/ソ連解体期/オレンジ革命後の分離運動とマージナルな活動家たち/アレクサンドロフの政治思想/2 建国期の試練/住民投票後の新体制、ロシアからの応援団/ロシアの介入の強まり/援助の交換条件/人民共和国の反転攻勢/押しつけられた第一ミンスク合意/ノヴォロシア国家連合の終焉/3 二〇一四年八月のドネツク(リアルタイム)/マリウポリを経由して/閑散としたドネツク市/山積みの食器/事実とテレビ/政府庁舎の高層階で/4 小康期の人民共和国(二〇一五─二〇一七年)/花壇とスケートボード/スルコフの政治技術者/建国者パージの第二波──共産党/建国者パージの第三波──プルギンとアレクサンドロフ/パージされた建国者たちのその後/無政党民主主義/「ドネツク共和国」と「自由ドンバス」/「防壁」/戦争犯罪とNGO/国際刑事裁判所への地元弁護士の訴え/5 活動家群像/「ロシアはパートナー、手本はヨーロッパ」/ドネツク空港の廃墟にて/越境する政党指導者/越境する兵士/6 経済封鎖以後(二〇一八─二〇二二年)/経済封鎖とクルチェンコの登場/ザハルチェンコの爆殺と二〇一八年元首選挙/本章のまとめ/第六章 ミンスク合意から露ウ戦争へ/1 分離紛争解決の五つの処方箋/処方箋①──連邦化/処方箋②──Land-for-peace/処方箋③──パトロン国家による保護国化/処方箋④──親国家による再征服/処方箋⑤──パトロン国家による親国家の破壊/2 ゼレンスキー政権の再征服政策/ミンスク合意の「リセット」/パリ四首脳会談/アゼルバイジャンに続け/3 奇妙な宣戦布告/ミンスク合意に見切りをつけたロシア指導部/二月二一日安全保障会議/ドンバス二共和国の承認/二つの宣戦布告の間/二四日の「特別軍事作戦」宣言/「ドンバス解放」/4 体制変更戦争/開戦/体制変更作戦の多様なバージョン/緒戦のロシア軍の苦境/5 領土獲得戦争へ/ヘルソン、ザポリジャの占領から併合へ/領土獲得戦争への険しい道/学生の志願/反一極世界外交に精を出すプーチン/九月の敗走と政治危機/新方針の採択/戦線の安定化/バフムト攻防戦とワグネル/ウクライナにとってのバフムト/ウクライナ国内の粛清/本章のまとめ/終章 ウクライナ国家の統一と分裂/分離紛争への実証的アプローチ/身体のアナロジーで領土を考える非合理/分離運動の社会的背景/継続する社会変動とトランスナショナリズム/あとがき/人名索引/参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぐうぐう

34
連日トップニュースで報じられるパレスチナ情勢を見ていると、まるでロシアによるウクライナ侵攻が終結したかのような感覚に陥ってしまう。あれほど紙面や時間を要して報じられてきたウクライナが、パレスチナ問題の陰に隠れて姿をなくしてしまっているからだ。マスメディアは一色に染め上げることを得意とし、それは別の色の存在を希薄にするという負の効果を促していく。そんな歪な状況だからこそ、現在読むべきではないかと、本書を手に取った。(つづく)2023/11/24

紙狸

21
2023年刊行。ソ連解体に伴い独立して以降のウクライナ政治の詳細な分析。2014年にロシアに併合されたクリミア、2022年以降のロシアの全面侵攻で併合されたドンバス地方に重点が置かれている。2014年にヤヌコヴィッチ大統領を失脚させた大衆運動「マイダン革命」について、日米欧のメディアの報道とは違って批判的だ。マイダン革命で権力を握った勢力には、反対派への暴力・殺害など未解明の疑惑がある。クリミアやドンバスのロシア語系住民から見ると、マイダン革命派に対して拒否感を抱いても当然だったという見方だ。2024/02/24

Toska

19
我々はソ連に復讐されているのだろうか。政治的にも経済的にもボロボロだったソ連末期、この「お荷物」さえ放り出せばすぐ幸せになれると誰もが思い込んでいた。反面、ソ連が営々と築き上げてきた産業や学術などのシステムをご破産にすることで何が起きるのか、真剣に考えた者はいなかった。結果、2020年のウクライナ実質GDPは1990年当時の63.2%(!)にとどまるという惨状。ロシア経済がこれよりましなのは資源があるからにすぎない。この貧しさこそがあらゆる問題の根源と著者は喝破する。2023/12/22

Francis

15
502頁もある大著。ウクライナは旧ソ連の崩壊により誕生した多様性に富んだ国家であったため、ドネツク、ルガンスク両人民共和国、クリミア併合などの分離運動を生み、それがロシア・ウクライナ戦争を招いたことが語られる。と書けば簡単なのだが、問題が複雑なうえ、登場人物も多数に上るため理解するのに時間がかかった。このような多様性のある国をまとめるには経済成長と繁栄が必要であり、、イデオロギーや言語はあてにならない、とはその通りなのだと思う。あとは独立戦争時に宗主国と一緒に戦った、と言う物語も必要なのだろう。2023/07/21

ふぁきべ

13
ロシア寄りというよりはウクライナ東部の独立派寄りな姿勢はやや垣間見えるが、ウクライナで起こっている問題の根源的な背景を非常に丁寧かつ詳細(ともすれば詳細すぎるほど)に紹介している。私にはロシアのこの問題への姿勢が場当たり的で、ウクライナ内部の政情に引っ張られた結果としてのウ露戦争であるとは思えないが、ウクライナの民族主義的な志向がロシア語話者の動向に多かれ少なかれ影響を与えたことは否定できないだろう。ウクライナの独立とその領土の一体性は支持するが、分断を招く政策には修正が必要に感じる。2023/10/31

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