内容説明
手作り模型や手書きのイラストにこだわるデザイナーの水島悟は、ある日自らが内装を手掛けた喫茶店「ピアノ」で謎めいた女性・みゆきと出会う。自分と似たような価値観を持つ彼女に徐々に惹かれていく悟。意を決して連絡先を聞くも、「お互いに、会いたい気持ちがあれば会えますよ」と言われ、連絡先は交換せず、毎週木曜日ピアノで会う約束を交わす。会える時間を大切にして、ゆっくりと関係を深めていく2人。しかし、突然彼女はピアノに現れなくなってしまい……。毎週同じ日、同じ場所で会う約束。時代に逆らうような“アナログ”な関係を描く、珠玉の恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅら
234
穏やかで静か、人情のあるお話。率直に言うと展開少なく大きな出来事もなく少々退屈。私はデジタルやネットが苦手なのでこの思いはよくわかる。ただ最後にもあるように、必要な部分はあるし便利なことも多いから使うとこ使って、過信したり飲まれすぎないようにすればと思う。こういう恋愛自体は純で好き。体やお金や物じゃなく気持ちだけを喜ばせる関係っていいなと思う。「もしそばにみゆきがいたら、この臭いも気にならないし心地よく感じられたかもしれない。幸せな気持ちになんて、大切なものが一つだけあればなれるものなのかもしれない。」2023/10/09
まさきち
134
若かりし頃、好きな人に連絡できないもどかしさで不安になり、時折自分勝手な妄想に耽って得も言われぬ幸せな気分に浸っていたりしていたことを思い出してしまいました。不便だったけど幸せな時間が懐かしくなりました。2025/04/08
美紀ちゃん
122
文庫で再読。連絡先を聞かずに木曜日の夜「ピアノ」というカフェで会う。自分に用事ができてしまい「ピアノ」に行けなくても連絡はできない。毎週木曜日を楽しみに生活を頑張る。そんな恋愛。仕事で出張、大阪へ。連絡もできず心配で仕方がない。でも彼女はちゃんと待っていてくれた。プロポーズしようと決心したその日、彼女は来なかった。しばらくずっと彼女に会えなかった。なぜなのか理由もわからない。あきらめるしかないのか?とモヤモヤしながら大阪に転勤。しかし!そんな時に大発見。友達が温かい。面白い。良い親友たち。泣ける恋愛小説 2024/06/14
いこ
105
以前、たけしさん監督の『あの夏、いちばん静かな海。』という映画を観た。聾唖の男女が主人公なので、台詞をほとんど排した静かな映画だった。本書を読みながら、その時と同じ静謐さを感じていた。実際には、こちらは主人公「悟」に漫才コンビのような悪友がいて、絶えずうるさく話しているのだが。悟は行きつけの喫茶店で、ある女性と出会う。その女性は「木曜日にここにいるから」と言うだけで、二人は連絡先も交換せず、木曜ごとにそこで会う。しかし、突然彼女が姿をみせなくなった。その理由とは。切なくて、胸が詰まる恋愛小説。2024/06/18
mayu
69
連絡先を交換せず、毎週木曜に会う約束をする。スマホでいつでも気軽に連絡をとれる現在に、あえてアナログな選択を。会えない時間に相手を想うときめきやもどかしさを素敵だと思う。「人と人との関係を作るのに大切なのは、会っている時の信頼感」確かにそうなのかもしれない。アナログからデジタルへ。二人で生きていくために、アナログを大切にしていた二人が受け入れたもの。素直なハッピーエンドを期待していたから切なくなるが、それでもこの二人には幸せを掴んでほしいと思う。ふざけてばかりだが、いざとなれば助けあう友情もまた良い。2023/09/10




