内容説明
手作り模型や手書きのイラストにこだわるデザイナーの水島悟は、ある日自らが内装を手掛けた喫茶店「ピアノ」で謎めいた女性・みゆきと出会う。自分と似たような価値観を持つ彼女に徐々に惹かれていく悟。意を決して連絡先を聞くも、「お互いに、会いたい気持ちがあれば会えますよ」と言われ、連絡先は交換せず、毎週木曜日ピアノで会う約束を交わす。会える時間を大切にして、ゆっくりと関係を深めていく2人。しかし、突然彼女はピアノに現れなくなってしまい……。毎週同じ日、同じ場所で会う約束。時代に逆らうような“アナログ”な関係を描く、珠玉の恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
234
穏やかで静か、人情のあるお話。率直に言うと展開少なく大きな出来事もなく少々退屈。私はデジタルやネットが苦手なのでこの思いはよくわかる。ただ最後にもあるように、必要な部分はあるし便利なことも多いから使うとこ使って、過信したり飲まれすぎないようにすればと思う。こういう恋愛自体は純で好き。体やお金や物じゃなく気持ちだけを喜ばせる関係っていいなと思う。「もしそばにみゆきがいたら、この臭いも気にならないし心地よく感じられたかもしれない。幸せな気持ちになんて、大切なものが一つだけあればなれるものなのかもしれない。」2023/10/09
馨
167
スマホでいつでも連絡がつく現代に、携帯を所持しないみゆきと毎週木曜に喫茶店で約束せず会うというたけしさん作のアナログな恋愛小説。購入を迷っていたところ映画化、ナツイチに後押しされました。二宮さんと波瑠さんが演じるとの前情報から、全て2人を思い浮かべながら。ピッタリな配役だと思います。起承転結がしっかりしており短めながら言いたいことは全て詰め込んだ感じがたけしさんらしいなと感じました。脇役のギャグ等もたけしさん色。今のサラリーマン世代の会話や飲み方じゃないと思うシーンもあるもののたけしさんだから許容範囲。2023/07/13
まさきち
129
若かりし頃、好きな人に連絡できないもどかしさで不安になり、時折自分勝手な妄想に耽って得も言われぬ幸せな気分に浸っていたりしていたことを思い出してしまいました。不便だったけど幸せな時間が懐かしくなりました。2025/04/08
美紀ちゃん
121
文庫で再読。連絡先を聞かずに木曜日の夜「ピアノ」というカフェで会う。自分に用事ができてしまい「ピアノ」に行けなくても連絡はできない。毎週木曜日を楽しみに生活を頑張る。そんな恋愛。仕事で出張、大阪へ。連絡もできず心配で仕方がない。でも彼女はちゃんと待っていてくれた。プロポーズしようと決心したその日、彼女は来なかった。しばらくずっと彼女に会えなかった。なぜなのか理由もわからない。あきらめるしかないのか?とモヤモヤしながら大阪に転勤。しかし!そんな時に大発見。友達が温かい。面白い。良い親友たち。泣ける恋愛小説 2024/06/14
いこ
105
以前、たけしさん監督の『あの夏、いちばん静かな海。』という映画を観た。聾唖の男女が主人公なので、台詞をほとんど排した静かな映画だった。本書を読みながら、その時と同じ静謐さを感じていた。実際には、こちらは主人公「悟」に漫才コンビのような悪友がいて、絶えずうるさく話しているのだが。悟は行きつけの喫茶店で、ある女性と出会う。その女性は「木曜日にここにいるから」と言うだけで、二人は連絡先も交換せず、木曜ごとにそこで会う。しかし、突然彼女が姿をみせなくなった。その理由とは。切なくて、胸が詰まる恋愛小説。2024/06/18