内容説明
この法則を知らずして、資本主義、地球温暖化問題、人類の未来を語ることなかれ。
「世の中には、ある一方向にしか動かず、『絶対に』元に戻せないことがある」。
たとえば、コーヒーにミルクを入れてかき混ぜると、コーヒーミルクができて、その後再びコーヒーとミルクに分かれることはない。
たとえば、熱いコーヒーをそのままテーブルに置いておくと、冷めてしまう。
たとえば、コーヒーを床にこぼしてしまうと、元のカップに戻すことはできず飲むこともできない。
こうした一見「当たり前のこと」は、じつは「エントロピー増大の法則」という物理法則で説明することができる。
この「エントロピー増大の法則」は、数多ある物理法則のなかでも、どんな時、どんな場所でも成り立つ「別格の」法則。私たちの生き方、社会、そして宇宙を支配する法則なのだ。
なぜ、経済が成長すると格差が広がるのか?
なぜ、SDGsはうまくいかないのか?
なぜ、温暖化が大きな問題なのか?
その答えは「エントロピー増大の法則」を知ればわかる。
今日の情報科学の発展にも寄与した法則を理解するための最適の教科書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
特盛
27
評価3.5/5。あらゆる物理法則でも別格の濃さで真理、と著者(著者は工学や生命科学分野の学者)は熱力学第二法則を評価する。そのコア概念の「エントロピー」をどこまでも分りやすく解説する本。シャノンの情報エントロピー(情報の曖昧さ)と熱エントロピーの関係の理解がまずは前半の土台だ。後半、話は社会や生命、我々の精神や宗教へと接続展開するのが面白い。時間の矢とエントロピー、SDGs目標の達成可能性とエントロピー、自由主義・資本主義とボルツマン分布をベースにした所得分布の議論はとても面白かった。2024/09/30
ミエル
26
4章仕立てのエントロピー駆使して現代世界を改善しようとする提案書と言った趣。1章ではエントロピーの基本概念を、2章3章ではそれぞれ数学的視点、熱力学視点でのエントロピー解説が続き(これが結構なボリューム)、4章でようやく帯にあった主題に触れる。もう、2章3章まではブルーバックスでも読んでるのかと思うほど、懇切丁寧なエントロピー解説で若干腰が引けた。4章のボリューム少なく見えるんだけど、著者はこの構成で納得していたんだろうか?と勝手に心配してしまった。エントロピー=無秩序の度合い、これでOKだと思う。2024/08/07
らっそ
13
正統派私立文系思考の私の心を捉えて離さない「エントロピーの法則」。精神的エントロピーという考え方を得られたので、少し意識して暮らしていければ、と思ったりする2025/04/27
サワークリーム
10
つくづく、物理学とは哲学である。自由が増大しても決して平等にはならない。そもそも民主主義が万能ではないのだから、熱力学の法則に則り、エネルギーまたは仕事を加えればよいだけの話ではないかと思う(ΔU=W+Q)し、その議論に興味がある。が、そのあたりはあまり触れられていない。完全循環型社会の実現は物理的に不可能。機会が増えるほど、秩序維持に多くの手間を必要とする。2024/05/28
みーちん
10
生態系の循環について調べているうちにエントロピーを理解したくなり本書を購入しました。一応エネルギー管理士の免許は持っていますがエントロピー(情報)が統計学的に説明できることを初めて知りました。全体的に図が多用され理解しやすくなっていますが、数式中心の部分はやはり難しく、分かったようなわからないような…。個人的に自由と平等が両立しない話が興味深かったので、経済活動とエントロピーの関係性についてもう1例くらい説明が欲しかったです。エントロピーの法則が普遍的なのはわかりましたが、中には拡大解釈では?と感じる→2024/01/29