内容説明
有色人種と弱者の期待を一身に背負って大統領となったオバマ。しかし底辺の人々は救われないままだ。「あそこの住民は簡単に人を殺す」「黒人はいつだって虫けらのように扱われる」「オバマは現実が見えていない」――物乞い、失業者、移民から元世界チャンプ、メジャーリーガーまで、筆者は丹念に、重苦しい現実と格闘する人々の声を拾って歩く。世界最大の階層社会で苦しむアメリカ人を描ききった渾身のルポ。
目次
オレもオバマに投票したよ―2人の教え子との対話
あそこの住民は簡単に人を殺す―最も危険な街WATTSを歩く
ここはゴーストタウンになりかかっている―スプリングスティーンが歌った街で
メキシコナンバーの車には近づくな―国境にて
黒人はいつだって虫けらのように扱われる―オスカー・グラント事件
祖父のように警官になろうと思う―黒人格闘家ヴァーノン・ホワイトの志
トロントに観光で来られるなら金持ちだ―カナダの移民たち
このままだとデトロイトは地獄になるよ―物乞いたちの生活
まずは高校を卒業させてやりたい―10代のホームレスを見守る人たち
オバマは希望を与えようとしないじゃないか―故郷・シカゴを歩く
オバマは理想主義者で、現実が見えていないよ―移民たちの明暗
政治家が何を話そうが、オレは全く興味ないね。あんまり人間を信用すると、痛い目に遭うよ―元世界チャンプの諦念
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
360
オバマ大統領が任期満了したので慌てて読んだ1冊。当時オバマ政権に期待した人がどういう思いで投票をしたのかがわかった。冒頭のオバマ以降の有力な大統領候補はいないと書かれていたが、結局消極的にトランプを選んだことを思うと虚しさを感じる。2017/02/28
佐島楓
12
アメリカの移民問題や医療保険問題、人種差別は根深いから一朝一夕には解決できないだろうし、まして日本の問題としてスライドさせるのは違うと思う。学力格差などの二極化は進むだろうが、私は日本の可能性をまだこれからも信じていたい。2011/07/28
なつきネコ
11
オバマも貧困、医療、差別の強いアメリカには勝てなかった。盲腸手術で2万ドル、義務教育を受けられない子供達がいる。この本はトランプに変わる前のアメリカの話だが、アメリカへの失望が伝わる。日本から見ると保険制度の確立に苦労するオバマはマトモな政治家だが、民に資本を中心にするスミスの考えは、国に金がなくなりうまくいかない。ここには書いてないがカトリックの力を衰えにより施しや犯罪者への抗生などができなり悪循環が広がっいる。教会の施しを渡り歩いたクリス・ガードナーのような逆転劇も難しい世の中になってしまったんだな。2017/09/11
rokoroko
11
読めば読むほどこの本に描かれた貧しいアメリカ人はオバマのあとトランプに投票したんだろうなと思った。トランプ氏が現在ツイートし大統領令を発令し、未来への希望を与えているのか!と思った。「どこかの国」や「だれか」のせいにしないと気持ちが収まらない、きれいごとでない現実があるんだと痛感した。今読むと興味深い2017/02/02
しんたろう
11
オバマも救えない『アメリカ』という題名だが、結論的にはオバマが解決できないのは『貧困』とその原因たるグローバル化による先進国中下層階級の没落だろう。中下層の貧困化は米国において特に顕著であり更に医療において悲惨な現象を見せている。オバマケアはそれに対する政策だが根本のグローバル化起因の貧困が解決できぬ以上、対処療法に止まる。グローバルマネーゲームの勝者から如何に所得の再分配の合意を得るかがポイントだが、強欲なアメリカのキャピタリズムは茶会党をはじめ強力な抵抗を見せている。日本も対岸の火事では済まされない。2014/03/12