内容説明
今、ここを歩くんだ――。
時代や社会に翻弄されながら歌い続けた少女の物語
新たなる歌姫アイナ・ジ・エンドが主演、松村北斗、黒木華、広瀬すずらが出演し、今秋公開予定の岩井俊二監督最新映画の原作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セロリ
42
スラスラ読める作品。物語は、キリエといっこさんの出会いから、いや再会から始まる。登場人物はそれぞれ事情を抱えている。歌えるけど話せないキリエと、そのマネージャーを買ってでたいっこさん、二人を引き合わせた夏彦のことが章を立てて書かれる。やや説明くさい。もっと読者を信じて、ストーリーの中に織り込んで教えて欲しかったな。そして最後の終章。うーむ、これはいかがなものか🤔 どんな効果を狙ったんだろう?なくても良かったんじゃないかと思ってしまう。2024/02/23
とくけんちょ
34
物語に没入できず。いろんなテーマが詰め込まれすぎて集中できませんでした。話のベクトルが縦横無尽に放射線状に広がっていく感じ。そのうえで感動させたいというオーラが、あからさますぎて。2025/03/29
漆虎太郎
34
人はみな思いのままにならない自分を抱えながらなんとか今日を必死で生き延びている。傷つき変形し萎縮した心は、解放を求めて歌の言葉と響きに共振・共鳴し、自分の世界を取り戻そうとする。主人公のキリエの歌声は、読者それぞれが響くものを想像して読み進めえることになる。そして登場人物それぞれの心の深層が明かされてゆく展開に魅せられページを急ぐ。しかも想像した歌声が頭の中で響いていて、登場人物とともに読者自体も立ちふさがった今日から解放された気持ちにさせてくれる、ステキな作品でした。私は一夜イッキ読みでした!!2025/03/08
Bashlier
33
3/5 現代作品では珍しいありえそうなフィクション良作。著者は一貫してフィクションとノンフィクションの境界線を探ってきました。本作はかなり熟成が進んだ印象です。今回のテーマは”声”。舞台と追憶の時間差が生々しく描かれてる点がベテラン技巧感たっぷり。ただし、元々が映像化前提の脚本である為、サッパリ塩味。お料理屋さんの突き出しで期待が高まるような感覚。滑り出しは上々、映像作品でこの脚本にどこまで味が乗ってくるのか、今から楽しみにしております。2023/07/09
ぽてち
30
ギターを手に街角に立ち歌うストリートミュージシャンのKyrie(キリエ)。聴く人の心を震わせる歌声をもつ彼女はしかし、歌以外では声が出せず満足に話すことさえできなかった。思いを声にできるのが歌だけなんてまるでファンタジー小説だなと思い読み始めた。まったくの思い違いだった。読み進めるにつれ、彼女の周りにいる風変わりな人々の過去が明らかになり、彼女自身が背負っているものが見えてくる。絶句し、涙があふれた。この作品は岩井さんご自身が映画化されている。残念ながら公開時に観られなかったので、機会があれば観てみたい。2024/02/12