内容説明
芥川賞と直木賞の候補作選びにはじまり、村上春樹はノーベル文学賞をいつとるのか、など、季節ごとに繰り返される文学的時事ネタがある。話題の根底にあるのは、「文学」そのものへの関心であり、境界がみえなくなりつつあるといわれる「純文学」と「大衆文学」の違いである。しかし、本当に「純文学」と「大衆文学」の区別はなくなったのだろうか。
日本における「純文学」と「大衆文学」それぞれの歴史を、過去の具体的な作品をとりあげながら考察する。また、専門分野である比較文学の立場から、ノーベル文学賞をはじめとする海外での文学賞のあり方や、とくに特徴的な英語圏における「文学」の定義づけ、そして映画、コミック、ラノベなどのジャンルにおける今日的「文学」のあり方を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
81
毎年の行事である、村上春樹のノーベル賞受賞騒動の話から、純文学とその対になる通俗小説、近代小説と以前の小説、詩歌、各国の違いなどをざっくばらんに語る新書。歴史小説と時代小説の違い、中間小説などなど。いつもの著者のトリビア的な知識が繰り広げられる。結論として、小説の技法はもうやり尽くしているとあり、非常に納得。消え行くものかもしれない。ラノベもでてきて驚く。作品名や作家名の説明が少ないのである程度知識がある人向け。少し物足りなさもあるが、神と同等に断言するほど不遜な評者はもうありえないのかもしれない。2017/12/11
ただいま蔵書整理中の18歳女子大生そっくりおじさん・寺
69
夢中で読んだ。純文学と通俗文学。歴史小説についてもページを割かれている。最後は私小説について。文学を取り巻く過去と現在のあれこれを知るのに良い1冊だと思う。第五章にメジャー出版社の出す総合誌、文藝誌、中間小説誌、週刊誌の一覧がある。集英社の部分に「週刊誌なし」とあるが、週刊プレイボーイがあると思うのだが(毛色が違うのであえて数えなかったか?)。私も昔は筒井康隆ファンで、筒井の短編『小説「私小説」』等を読んで、私小説を読んだ事もないのに私小説を軽蔑していた。西村賢太のファンになった今となっては恥ずかしい。2017/11/10
tomi
32
「純文学」とは何なのか? シェイクスピアや源氏物語から現代文学のみならず̪、詩や児童文学、漫画、アニメ、映画、音楽といったジャンルを超えて、縦横無尽に純か通俗かを論じる。色々詰込んだために散漫な感も受けるが、読みやすく面白い。私小説に批判的な批評家は触れたくない過去を持っている、という指摘など興味深い。戦後の大衆文学を代表する松本清張が芥川賞作家であるように、純文学作家と言われる作家の作品が純文学とは限らないのは当然ですが、大江健三郎や古井由吉といった中間小説誌に書かない作家を純文学作家としたほうが→2020/11/20
阿部義彦
27
不思議な純文学というカテゴリー、著者は純文学←→通俗小説という大枠そして、中間小説(もはや死語?いや私は親しんでましたが)という言い方も援用してかなり大胆に決めつけてますが、これがかなり核心をついていて、初心者にもイメージがつかめるかと思います。時代ものには私は疎いので(時代小説嫌いのSF好きと書かれた通り)第5章からは俄然と面白くなり、適当な直木賞などはその通りと思い、外国の文学(ポール・ギャリコが典型的通俗作家!)に関することから私小説論(皆んな裸踊りが好きなのだ!至言)、私怨もスパイス効いてる!2017/11/16
梟をめぐる読書
18
文学関連ではハズレのない、小谷野敦先生の新著。純文学と大衆文学の違いに始まりそもそも「純文学」という語が生まれたのはいつ頃なのか、外国にも「純/大衆」という区別はあるのか…など、縦横無尽に語りつくす。かつてエンタメ作家の伊坂幸太郎が「純文学」を軽視するような発言を繰り返していた時期があり、なにくそ、と思ったものだが、今後彼より下の世代で「文学」を仮想敵に仕立てて戦おうなどという書き手はもう現れないのだろうな…と思うと若干寂しくもあり。もうそれくらい、純文学というコトバは存在感を失ってしまったのだ。2018/01/11
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