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内容説明
アムステルダムの場末のバーでなれなれしく話しかけてきた男。彼はクラマンスという名のフランス人で、元は順風満帆な人生を送る弁護士だったが、いまでは「告解者にして裁判官」として働いているという。五日にわたる自分語りの末に明かされる、彼がこちらに話しかけてきた目的とは? 『異邦人』『ペスト』に並ぶ第3の小説、待望の新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
43
5日間にわたる自分語り。元は順風満帆の弁護士であったにも関わらず、今では「告解者にして裁判官」へと転落したのですね。ひたすら独白が続きますが、罪の告白と言えるでしょう。誰でも自己中心になり得ることを教えられた気がします。2025/01/14
ころこ
41
「告解者にして裁判官」とあるが、重要なのは言うまでもなく裁判官の方だ。偽善を告白することで悪を捏造し、審級になってしまえば、あとは相手を裁くだけとなる。現在でも、少し前は政治系の討論番組で、現在ではSNSの泥試合で使われている。解説にあるように、本作のモチーフがサルトルとの間で交わされたのは政治的な立場の違いについてだというのはむべなるかな。タイトルの転落はまずは溺れる女、一人称話者クラマンス。そしてこの詐術に陥った一人称の聞き手である読者というオチが本作の持ち味だ。2024/10/12
ポテンヒット
15
この本は解説やあとがき、ネタバレ感想を最初に読まないで本文を読んだ方が数倍面白いと思う。話しかけてきた男クラマンスのいう「告解者にして裁判官」とはどういう意味なのか、彼に何があったのか、近づいてきた理由は何なのか、「転落」とは何を意味するのかを探りながら読む面白さがある。彼の人間を見据える悪魔のような冷徹さに心奥を覗き込まれた思いがして肝を冷やす。読了後に解説を読んで、カミュがこの本を書いた背景を知り唸る。2023/06/23
fseigojp
13
読書会課題本 カミュ最後の小説(未完はあるが、完結はこれが最後) 長編は、異邦人、ペストとこれだけ いかに若くして名声をえたかがわかる ちなみにノーベル文学賞の最若年受賞はキップリングで41歳、カミュは43歳で2位だ2023/08/05
青柳
7
アムステルダムの場末のバーにて、慣れなれしく話かけてきた男の話を五日間延々と聞くことになる斬新な小説です。クラマンスと名乗るフランス人は元々弁護士であったが、今は零落し「告解者にして裁判官」として働いているという。所々話が脱線しストーリーが追いにくいものの、訳者の前川先生による前書きやあとがきで全体的な構成が分かり易くなっている印象です。読んでいて太宰治の「駆け込み訴え」に似てる気がしました。サルトルは本作を高く評価したらしいのですが、個人的にはそこまで…という感じが致しました。2025/07/23