内容説明
父はなぜ別人になって生きようとしたのか?
1994年5月、大阪市東淀川区に住む大屋隆司の父親・横山道雄が突然、失踪した。この失踪騒ぎの後、みるみる衰弱していく父を看病する中で、隆司はこれまで知らなかった父の過去を知る。
父の戸籍上の名前は「大田正一」といい、死亡により除籍されていた。
大田正一といえば太平洋戦争末期に「人間爆弾」と呼ばれた特攻兵器「桜花」を発案したとされる人物である。大田は終戦の三日後に遺書を残し、茨城県神之池基地を零戦で飛び立ち、そのまま帰ってこなかった。
ところが、大田は生きていた。「茨城で牧場をやっている」「新橋の闇市に連れて行った」「青森で会った」「密輸物資をソ連に運んでいる」……断片的な目撃談や噂はあったものの、その足取りは判然としなかった。
1950年、大阪に「横山道雄」となって現れた大田は、結婚した女性との間に三人の子供をつくり、幸せな家庭を築き、94年にその生涯を終えた。
それから20年後の2014年、大田の遺族を名乗る女性からの電話に興味を持った著者は、大田の謎多き人生について調査を始める。それは隆司ら家族にとっても父を知るための貴重な時間となっていく。
「本当の父親」を探す旅の結末は――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
まるほ
47
この時期に“戦争モノ”の1つでも読まねば、と自分自身に課した課題図書。▼戦争末期に海軍で発案・開発された人間爆弾“桜花”。特攻兵器であり、爆弾にロケットエンジンを装着し、目標物に誘導する目的のみの操縦席を持つ滑空機。帰還は予定されておらず、米軍からは“BAKA Bomb”のコードネームで呼ばれていた。▼この兵器を発案した大田正一は、終戦時に行方不明となり死亡が認定されていたが、実は戦後別名横山道雄を名乗り、無戸籍状態で正体を隠しながら平成6年まで生きながらえていた。そんな太田正一を追う渾身のルポタージュ。2023/08/17
ryohjin
19
特攻用ロケット機「桜花」の発案者とされる大田正一氏のルポルタージュ。終戦直後に練習機で飛び立ち消息を絶ちますが、海上で救助され、戦後も生き延びました。戸籍は抹消され、偽名で生活し、結婚(事実婚)し子供をもうけ、82年の生涯をとじます。亡くなった後の取材なので真意はわかりませんが、人生の最後に高野山に向かい、海軍戦没者慰霊塔に手を合わせた後、自殺を試みますがなしえず、約半年後に世を去ります。特攻兵器に関わった重荷を背負った人生において、昭和20年の終戦は、戦争の終わりではなかったことを重く受け止めました。2023/09/19
遊々亭おさる
18
海軍における特攻兵器「桜花」の発案者である大田正一は終戦の日から三日後、零戦に乗って死への旅路に飛び立った・・はずだったが戦後日本各地で彼の目撃情報が聞かれる。そして平成の始まりに亡くなった老人・横山道雄こそが大田正一であることが遺族の証言で明かされ…。戸籍を持たず本当の自分をひた隠しにして戦後を生き抜いた男の生涯。ある人は彼を「最低の男」と評する。時には美談としても語られる特攻隊員の本音。本書は彼を海軍の自己保身のための被害者だった可能性に言及する。加害者であり被害者でもある。戦争は一筋縄ではいかない。2023/11/13
ポポロ
9
桜花を考案し終戦直後に死んだ筈だった大田正一が名前を変えて生きていたというNF。終戦で自決した人もいれば生きることを選んだ人もいる。大田は正体を隠して生きた。それは自責なのか逃避なのか勘違いなのかまたは本書で示唆されているように圧力のためだったのかもしれない。終戦で全てが御破算になったのではない。戦中の地位を活かして出世した人も多い。大田の戦後はその影のように思えた。生きていればいいじゃないかと思いながらも桜花に乗り込み戦後の可能性を持てなかった若者を思うと正解かわからなくなる。戦争はどこまでも悲惨だ。2023/07/01
からす
7
必死の兵器に込められた思いに、背筋が寒くなる。表に出せないことがたくさんあったのだろう。2023/09/19
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