内容説明
あなたを知ることは、あなたという人を選んだわたしを知ること。
多民族国家の生きた声を掬う在豪作家が贈る、力強くみずみずしい《越境青春小説》。
父の転勤にともない12歳でオーストラリアに移住し、現地の大学生となった安藤真人。憧れていたはずの演劇の道ではなく就職を選ぼうとしていたところ、デザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会い、人形劇の世界に誘われる。日本人としてのアイデンティティの問題に苦しんできた真人のように、「同じアルメニア人と結婚を」と刷り込まれてきたアビーもまた、出自について葛藤を抱えていた。互いを知りたい、相手に触れたい。しかし、境遇が似通うからこそ、抱える背景の微妙な差が、猛烈な「分かりあえなさ」を生み……。
話題の既刊『Masato』『Matt』につらなる、「アンドウマサト三部作」最終章!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
197
岩城 けいは、新作中心に読んでいる作家です。「アンドウマサト三部作」最終章、『Masato』⇒『Matt』⇒『M』とタイトルがどんどん短くなって完結❓となりました。オーストラリアは元白豪主義の国だけあって、今でも人種差別は色濃く残っているようです。 https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771818-8 2023/08/13
モルク
99
「Masato」「Matt」からの三部作の最終章「M」。12才で家族でオーストラリアに移住した真人も大学生。日本語は話せるが読み書きは苦手となるまでになった。それでも人種や文化アイデンティティの差異により、移民が多く人種のるつぼであるオーストラリアにおいてでさえ違和感を感じたりする。そしてアルメニア人のアビーと出会う。彼女も小国という国への、家族への思いを抱えていた。その抱えているものの違いで二人は今一つわかりあえない。前二作に比べ入り込めない。真人が大人になったためか、自分がのほほんと暮らしているせいか2023/09/06
ゆみねこ
81
12歳でオーストラリアに移住した安藤真人は現地の大学生に。国籍・人種で葛藤を抱えるマサトとアルメニア人のアビーは互いに惹かれながらもうまく行かない。抱えるものの違いが分かりあえなさに。うーん、マサトが大人になってしまい、少年のキラキラしたものが失われてしまったせいか、少し読みにくく感じて残念。2023/07/18
J D
72
岩城けいさんは、初読み作家さん。読み終わって知ったんだけど、この作品は、シリーズらしくてこの前に2作品あるらしい。普段自分が日本人であること、特に、黄色人種であること等意識することはないんだけど、この作品を読むと人種とかアイデンティティについて思いを巡らせた。マサトの今に至るまでの成長物語読んで行きたい。2023/08/09
pohcho
57
「Masato」「Matt」に続くシリーズ第三弾。父の転勤に伴い12歳でオーストラリアに移住した真人は大学生に。中身はオージーなのに見た目が日本人な彼は、常にステレオタイプをつきつけられて生きる日々。そんなある日、親友の妻の紹介でアビーと出会うが、アルメニア人の彼女もまた、自分の出自に葛藤を抱えていて・・。国籍、人種、家族。似ているようでまったく違う悩みを持つ二人。青春恋愛ものとしても読めるし、苦しみながらも、自分のやりたいことを探す若者の成長譚でもあった。2023/07/19