内容説明
小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の探し物を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。芥川賞候補作品。(解説・又吉直樹)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Nao023
38
母の姿はどんなものであろうと美しい。2025/12/19
沙智
10
風俗店で働く母とその母が働く姿をカーテン越しに見つめる小学生の娘の小説。透明で無垢な語り口が特徴的。子供の限られた語彙で語られる世界は実情との乖離が激しくて、小説世界に没入するにつれ胸の内がザワザワしてくる。著者の手掛けてきた楽曲達とは全然印象の異なる小説だった。他の作品も読んでみたい。2023/10/03
新田新一
9
2020年の芥川賞候補作。作者はロックバンドのボーカリストです。小さな女の子から見た母親の姿が描かれています。子供の視点で描かれた小説は、よく読んでみると大人のものの見方や考え方を感じることがあります。でも、この小説にはそんなところはほとんどありません。完全に子供の立場に立ったもので、子供から見たこの世界が鮮やかに描かれています。自分の母親が後ろ暗い仕事をしていることが分かっても、主人公の女の子は母を慕い続けます。その健気さが胸を打ちます。彼女が母との関係を、自分の言葉で表現する結末が忘れがたいです。2023/08/05
あいあい
5
讀賣新聞の書評で気になった尾崎世界観氏の作品を読んでみた。言葉を使って一つの文学世界を作りあげようという意志を感じる。少女の目が、耳が、鼻が、舌が、皮膚が捉えた世界の感触が至極独特にかつリアルに描かれていてみごと。しかし、この子の置かれた状況が切なくて、短い物語なのに読み進めるのがつらかった。それでももっと作品を書いてもらいたい。又吉直樹氏の解説もお見事。2023/09/12
きつね
4
クリープハイプは有名曲を知っている程度。ゆらゆら帝国的な捩れた世界と余白+buck number的な青臭さと内省が織り混ざったイメージ(個人の感想)のバンドの歌詞から予想可能な範囲を遥かに超えた、エグ味のある作品だった。子ども特有の無邪気さと残酷さ、ナチュラルなルッキズム、知的好奇心の解像度が高い。登場する大人の男はおじいちゃん以外全員ゴミだし、ひたすら主人公を心配しながら読んだ。短い中に貧困、特性、搾取、偏見等色々なテーマと気付きがあった。非文学エリートの作品は視野が独特で、やっぱり侮れない。2026/05/19




