内容説明
牙獣と呼ばれるあやかしを操り、
人々に害をなす幽鬼を祓う、白牙法師を目指して修行の旅をする刻雨。
ある晩踏み入れた山中で、巨大な幽鬼に喰われかけた彼は、ひとりの青年に命を救われる。
自らを萬景王であると名乗るこの青年は、しかし、
顔を持たぬ異形の鬼と化していた──。
国を案ずる名もなき王。
神に祟られた禁忌の子。
ふたりの邂逅の先にあるものとは。
絆によって導かれたふたりが、新たな運命を切り開く!
陰謀渦巻く小国を舞台に綴られる、予測不能の和風ファンタジー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
230
東洋系の小国を舞台に白牙法師を目指す旅の修行僧、刻雨(ときさめ)と顔を持たない異形の、のっぺらぼう男、新玉(あらたま)の活躍を描く和風あやかしファンタジー小説です。まあ小説世界を理解するのに多少とも時間はかかりますが、世界観に慣れればノリが良くテンポよくリズムに乗って活劇場面も心地よく楽しめますよ。二人の心の交流と互いを思い遣る友情の描写も素晴らしく、先の見えない二人の未来が今後どうなって行くのかが非常に気になりますのでぜひとも早い機会に続編を読めますようにと待望しておりますね。#NetGalleyJP 2023/07/12
RIN
27
まず、これだけの筆力を持った作家を世に出してくれたとを『ことのは文庫』に感謝したい。舞台は陰謀渦巻く小国・萬景。能力のある影と気弱な光から生まれた災いの種は復興目まぐるしい小国を徐々に蝕み、神と人の狭間にて産まれた呪いの子は己の半身を取り戻すべく奇妙な縁に巻き込まれていく。鮮やかに浮かぶ情景。荒魂と刻雨が国の為に奔走する命の躍動感。涙はいつか乾くと、どうか信じて魂の供よ。移ろい巡る季節の中で、あの日取り零した自由を共に分かち合おう。違えたはずの道は重なり、僕は僕をもう恐れない。魂の供よ、君に幸多きことを。2023/07/02
すがはら
16
ふりがなずっと付けてて欲しい。漢字が多いし読みも難しいし。後半はグイグイ引き込まれました。町に入ってからは、新玉が魅力的な人物だけに、もう死んじゃってるのが惜しくて辛い。眼の前で生き生きと動いてるのにね。命が軽い世の中って嫌だなとしみじみ思います。2023/08/05
グレートウォール
15
顔を隠す目的で仮面を被るのはあるが顔が無いから仮面を被るは珍しい。 東洋ファンタジーのバディもので、国の一大事に刻雨と彼の物語は、軽快さとシリアスさのバランスが素晴らしい。 序盤はまだ世界観に慣れず、且つ、東洋ファンタジーによく見られる漢字の多さや羅列に面食らうけれど、慣れてくれば問題なく読める。 彼の信念や熱い想い、台詞ににじみ出る作品のテーマに泣けた。 昨今、本屋でよく見かけるようになったこういった表紙のファンタジーものの中に置かれると、どうしても埋もれてしまうけれど、中高生にこそ読んでほしい。2023/06/20
杳
13
人は誰でも自分自身でしかいられないけれど、一切の誤魔化しのない自分自身のままでいることは勇気のいることなのかもしれない。自分を押し込めて生きようとしていた刻雨と、顔を失ってしまった「あらたま」、巡り巡った出会いの中に彼らが偽りない自分自身に立ち返るための勇気の芽が隠されていた。東アジア風のファンタジックな世界の中で展開する、冒険と葛藤と育っていく友愛を楽しみました。 #NetGalleyJP2023/06/19