内容説明
慣れ親しんだ鞆ノ津の釣場、尾道で訪ねた志賀直哉の仮寓、ひとり耳にした平和の鐘の音、「黒い雨」執筆の頃、母親のこと――。広島生まれの著者が綴った、郷里とその周辺にまつわる随筆十七篇、小説「因ノ島」「かきつばた」、半生記などを収める。豊かな海山や在所の人々へのあたたかな眼差しがにじむ文庫オリジナル作品集。〈解説〉小山田浩子
目次
Ⅰ
広島風土記/志賀直哉と尾道/尾道の釣・鞆ノ津の釣/因島半歳記/鞆ノ津/鞆は生き慣れた釣り場/消えたオチョロ船/大三島/大三島の樟の木/備前牛窓/ふるさとの音/備後の一部のこと/故郷の思い出/備南の史蹟
*
因ノ島(小説)
Ⅱ
疎開日記/疎開余話/在所言葉
*
かきつばた(小説)
『黒い雨』執筆前後(談)
Ⅲ
おふくろ/半生記(抄録)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
12
井伏鱒二で広島という題材の選集を出すのであれば『黒い雨』について、言及されるものはあるのだろうと思ったが「戦争と同じで前線にいる兵士には戦の全ぼうがわからない」「原爆についても同じことが言えると思う」など経験したからこそ至った考えが見える。井伏鱒二という作家が『黒い雨』の執筆にあたり、どう原爆に向き合ったかその一端が読めたのはありがたいが言葉の節々に、現代では軽々しく口にするのを憚れる凄味があった。勿論それ以外の広島の様々な箇所を巡る紀行文も楽しかったが、それを踏まえた上での戦時中の話が効果的すぎたのだ。2023/12/16
Naoko Takemoto
11
井伏鱒二はウチの旦那と同郷である。(井伏鱒二のほうが山奥)本当に沢山の著作を残し、更に、太宰治との因果な金貸し関係が昨今取り沙汰されているが、本書は故郷広島にまつわる随筆を集めたものである。 彼の人となり、幼少期からの思い出、[黒い雨]執筆の裏側までまとめられている。広島にご旅行の際はガイドブックと共にこの一冊を通読されると感慨深い旅になると思います。良本です。2023/11/03
ベンアル
8
父親から借りた本第四弾。著者は教科書で黒い雨を読んで以来である。時間の都合で備前牛窓までしか読めなかった。著者が瀬戸内を歩いた時の日記という感じである。地元の町と山が出たときはテンションが上がった。広島と岡山に精通していればより面白いと思う。2025/01/06
pitch
5
全部広島の話かと思ったら、近畿中国地方の各地の思い出話。幼少期のエピソードがたくさん。最後の半生記が、井伏文学の底流を感じさせて読み応えあった。また、原爆投下直後から終戦までの様子が生々しく、今となっては貴重な記録。歴史の転換点を作家が目撃して、書き残してくれるというのは後の世にとっては有り難いことなのだと改めて思う2025/03/31
代拿邁人☆
2
広島に旅行に行くのに予習で読んだ。Ⅰは付近の島々の釣りや文化の話、Ⅱは原爆関係、Ⅲは自伝的な文章になっている。地名が多く出てくるので地図を少し見ると分かるかも。どれも人の行動への繊細な感想が含まれていて面白かった。2024/08/15
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