内容説明
第4回笹井宏之賞神野紗希賞受賞の著者による第一歌集。
雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること
第4回笹井宏之賞神野紗希賞受賞の著者による第一歌集。
安田さんの歌には、「それでも」言葉を信じて光のほうを向き直す、高潔な魂が震えている。
──────神野紗希
【著者】
安田茜
1994年、京都府生まれ。「立命短歌」「京大短歌」「塔」出身。現在は「西瓜」所属。2016年、第6回塔新人賞。2022年、第4回笹井宏之賞神野紗希賞。
目次
Ⅰ
遠くのことや白さについて
Ⅱ
円になる
ひるなかの耳
席を立つ
舟を出す
weather
twig
default
new moon
agnes
apologize
水煙草がほしいだけ
さくら
Ⅲ
花のつるぎを手放しなさい
叫声
きみの土地から
立ちつくしたい
蛍石
箱
瞼
些事
つばさ
火の話
鉱石
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カフカ
43
「からだ持つかぎりわたしのなかにあるくるしみ・月のひかり・痛み」 「泣きたくて瑪瑙のような空の下ゆびわをゆるめたりはずしたり」 「かなしいね人体模型とおそろいの場所に臓器をかかえて秋は」2024/03/04
だいだい(橙)
17
冒頭の「遠くのことや白さについて」は挨拶系の連作か。体の部分や声を取り入れながら、幸福感にあふれてはいないけど、いわゆる「生きづらい」人でもない、人生に凛として対峙する若い女性の像が立ち上がってくる。栞で江戸雪さんが言うかっこいい「怒り」も感じつつ、強く見える表現の中身は必ずしも「怒り」だけではないのかな、と。勝手な想像だけど、安田茜さんはツンデレ系かも。誰かや何かを突き放すような態度を見せつつ、世界とそれなりに関わっていく。百パーセント前向きでもないが、暗くもない。好きだなあ。2023/12/01
わいほす(noririn_papa)
5
今年30歳になる著者の昨年出版された第一歌集。感性と感情がとりとめなく言葉で紡がれているような。どこか虚無的で月や雪が多く登場する。若い人の不安定な感情は、その儚さと脆さが心を蝕んでいかないかと読みながら、つい心配になってしまう。「きずついたゆめの墓場へゆくために銀紙で折るぎんのひこうき」「かなしいね人体模型とおそろいの場所に臓器をかかえて秋は」「知ってます雪に匂いがあることを 文庫にカバーかけて手渡す」。学生時代の作品で「しらたきが箸のさきから逃げてゆくかろやかさごときみを思って」はちょっと面白い。2024/11/05
qoop
5
感情を抽象化して大きな言葉に託すようでいて、かと思えば生活の節々を具象的に捉えようとして、その遠近の距離感を測れないような読み心地が続いたが、結晶質というタイトルは抽象と具象を含みつつどちらにも寄らずに言葉にとどめおくことなのか、とふと感じた。/つぎつぎに炎や薔薇をひらかせて動悸がむねをおとずれて去る/序破急でいうならいまはどのあたり手遊びばかりしている暮らし/体内に嵐を秘めていたはずがわたし自身があらしであった2024/03/26
チェアー
4
全体的に歌はわかりにくい。だが、そのわかりにくさがわかろうという能動的な思いを生み出すのかもしれない。わかりやすいことを旨とする短歌とは反対のホームで電車を待つ歌人。それは好感が持てる。 2023/06/29