内容説明
世界の本質を鮮やかに描いた慧眼の作家 駒沢敏器が遺した幻の長編小説が、没後10年を経てついに刊行。
世界の自然音を録音しながら音の向こうの世界を見出そうとする公平と、レコーディングスタジオで働く恭子。
セント・ギガ(実在したラジオ局)に感銘を受けて自然音を採取し録音作品を作り始めた公平は、見えない音の向こう側にある世界を見出そうと日本を旅し、沖縄にたどり着く。その旅路を見守る恭子。2人は、お互いの存在を通してそれぞれ自分自身のあり方について真摯に模索し続けていく。
世界中を巡りながら紀行文を書いてきた駒沢氏の抱えていたテーマや思想が、フィクションという形で展開された作品。
【著者】
駒沢敏器
1961年東京都生まれ。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、作家・翻訳家に。主な著書は、小説に『人生は彼女の腹筋』(小学館)、『夜はもう明けている』(角川書店)、ノンフィクションに『語るに足る、ささやかな人生』(NHK出版/小学館文庫)、『地球を抱いて眠る』(NTT出版/小学館文庫)、『アメリカのパイを買って帰ろう』(日本経済新聞出版)、翻訳に『空から光が降りてくる』(著:ジェイ・マキナニー/講談社)、『魔空の森 ヘックスウッド』(著:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/小学館)など。2012年逝去。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
29
村上春樹的な世界だな、と思った。といってもありがちな猿真似/エピゴーネンではなく、その作品を貫く哲学において(どこまで著者が意識していたかはわからないが)こちらの理解を超えた「異界」をめぐることで(そして、言語化不能な「死」をたんねんに考察することで)そこから「生」のかけがえのなさを逆照射するところが似ていると思ったのだ。男に都合がよすぎる女性描写がやや気にならなくもないのだけれど、それでもここに内在する骨太の哲学を斬って捨てたくない。生きている者として死者の記憶をどう保持し、それを誰かに伝えるべきなのか2025/04/30
コジターレ
7
この小説の主題は何かと問われたとき、答えは人によって異なり多様なものになる気がする。自然への畏怖を忘れてしまった人間社会の傲慢さや全能感、それゆえに訪れる哀しさを描いた物語のように僕は感じた。生も死も生きる上でのリズムさえもコントロールできるという考えが、頭のどこかにある。だから、人間は不必要に苦しんでしまうのてはないか。そうは見えない苦悩も、実はそういうことが端緒になっているのではないか。生物の中で人間だけが自殺をするのも、そういうことなんだと思う。2025/05/21
かみーゆ
5
すごく良かった。しっかり駒沢さんの小説になってる感じがする。駒沢さんがちゃんと「ここにいる」のが伝わってくるのが嬉しいですね。沖縄についても批判すべきところはちゃんと批判しつつ、人も自然もとても魅力的に描かれていて。その空間にある磁場みたいなものも含めて表現するの、ホントうまいなあと思います。だから駒沢さんの本に出てくる町とかって行きたくなるんですよね。金山町行ってみたいなあ。あとは何と言ってもst.gigaですよ。これで話題になってCD再販されないかなー。最後に発刊してくれた風鯨社に感謝を。2022/08/15
三鷹台のすずめ
3
駒沢さんが渦巻きのなかどんどん遠くなっていく 音 がきこえてきました。2022/11/23
佐々木 亮
1
5ヶ月かけてゆっくりゆっくり大切に読み進めた本。 一気に読んでしまうと、その深い世界から抜け出せなくなりそうなので。 今自分が実際ににそこに身を置いているようなくらいに自然・音の描写が鮮明で、読み終わる頃にはまるで暫くの間旅をしてきたかのよう。 しばし余韻に浸るとしよう。2024/03/20
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