岩波現代文庫<br> 〈個〉の誕生 - キリスト教教理をつくった人びと

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岩波現代文庫
〈個〉の誕生 - キリスト教教理をつくった人びと

  • 著者名:坂口ふみ
  • 価格 ¥1,782(本体¥1,620)
  • 岩波書店(2023/06発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784006004606

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内容説明

イエスの隣人愛の思想がその死後ギリシア・ローマの哲学的言語によって教義化されていく過程で,新たな存在論が作り出された.個の個的存在性(かけがえのなさ)を指し示す概念を中心とするこの存在論が古代末期から中世初期に東地中海世界の激動のうちで形成された次第を,哲学・宗教・歴史を横断し伸びやかな筆致で描き出す.(解説=山本芳久)

目次

はじめに
序章 カテゴリー
カテゴリー
隣人
迂回(一)――隣人からキリストへ
迂回(二)――キリストからキリスト教思想へ
第一章 いくつかの日付
1 教義論争の意味
2 いくつかの日付
3 コンスタンチヌスとビザンツ的構造
4 ニカイア公会議
5 パルメニデスの裔
(1) 論争のきっかけ
(2) パルメニデスの裔
6 旧約伝統のヘラス化
7 パルメニデスに背くもの
(1) アリウスとアタナシウス
(2) ホモウシオス――何が同一なのか
(3) いくつかの解答
解答(一)――ネオプラトニズム風
解答(二)――ウシアとヒュポスタシスの区別
解答(三)――私の心の省察から神へ
8 第一コンスタンチノポリス公会議
第二章 ヒュポスタシスとペルソナ
1 東方の息吹き
2 迷子になった概念
(1) ヒュポスタシス
(2) ピュシス
3 翻訳による変貌
(1) 顔――ペルソナとプロソーポン
(2) ペルソナ
4 概念のポリフォニー
第三章 カルケドン公会議――ヨーロッパ思想の大いなる転換点
1 前史
(1) 帝国の政治
(2) 教会政治と教理
オリゲネスとアポリナリスにおける二本性と一本性
ネストリウスとキュリルスにおける二本性と一本性
エフェソスの公会議
合同信条
盗賊会議
2 カルケドン公会議
(1) 第一・第二会議
(2) レオの書簡――西方世界のメッセージ
(3) カルケドン信経の成立――第三会議から第五会議まで
(4) カルケドン信経の問題点
3 カルケドン以後
(1) キュリルス左派の抵抗
(2) 「統一令(ヘノティコン)」と東西教会の分裂
(3) 単性説の理論家セヴェルス
4 ユスチニアヌスの路線
(1) カルケドン派の勝利と変貌――ユスチヌスとユスチニアヌスの政治
(2) 第二コンスタンチノポリス公会議
第四章 キリスト教的な存在概念の成熟
1 ネオ・カルケドニズム
2 ヒュポスタシス=ペルソナ
3 混合のメタファー
4 アリストテレス以降の混合論
5 キリスト教の混合論
6 新しい存在論の完成形――二人のレオンチウス
(1) 両レオンチウスに共通の理論的意図
(2) ビザンツのレオンチウス
(3) 「オリゲニスト」
(4) ビザンツのレオンチウスのキリスト=ヒュポスタシス論
(5) エルサレムのレオンチウスのキリスト=ヒュポスタシス論
第五章 個の概念・個の思想
1 残されたものと成就されたものと
2 ビザンツ的インパクト
おわりに

あとがき
解説かけがえのない「個」への導きの書 ………山本芳久

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

75
4~6世紀のキリスト教教義確立までの話。イエスが受苦により人の罪を贖った一回限りの奇跡・生の理論化は、普遍から個、一から多を認識するギリシア哲学の枠組みを受継ぎながらも、個を最も尊貴なもの・本質とする転換を起したこと、それはアリストテレスが付帯性・重要でないとした個的なものをこそ人間の中核に置くもので、近代の「個の尊厳」の芽だったことが語られます。それが現代で自意識の孤立を生みもするのですが、その苦しみもこの「語りがたいもの」に名を与え固定した人々のおかげと思うとその「恵みと呪い」に胸が詰まるようでした。2023/02/21

松本直哉

32
個性的な友人アンナについての回想に始まり、めくるめく濃密な神学的議論を経て、最後に再び亡きアンナへの呼びかけで終る構成が、〈個〉の誕生という主題にふさわしい。4~6世紀のアリウス派やネストリウス派などとの論争、ギリシャ語圏のビザンツとラテン語圏のローマとのせめぎあい、ギリシャの静的普遍とヘブライの動的な関係性の対立を通じて、いかにして個の概念が成り立ったか。概念やカテゴリーではすくいきれない、今ここにいる生身の裸の隣人のかけがえのなさを、いかにして哲学の言葉にしていくか。温かい血のかよっている哲学書だった2023/02/23

Ex libris 毒餃子

14
公会議を経てキリスト教教義が確定していく中で「個」概念が確立していく過程を綴った本。三位一体の教義から逆説的に「個」概念が確立していくダイナミクス!2023/06/03

ぷほは

9
「主体の代替(不)可能性を持つ近代的個人」などと安易に表現する社会学者の思考様式を根源的に粉砕してくれる。坂部恵『ヨーロッパ精神史入門』を思い出しながら読んでいると、巻末解説で彼の名前が登場した。原著刊行1996年という冷戦崩壊間もない時代の熱気を刻印すると共に、バフチンやレヴィナスに響きわたる「東方」の奥行きを存分に味わえるため、ロシアのウクライナ侵攻真っ只中の正に今、現代文庫に入る必然性も感じられた。ポップカルチャー分析が有名性やキャラクターの身体性について余りにも浅い蓄積しかないことを思い知った。2023/01/20

青柳

8
古代末期から中世初期のギリシャ教父らの激しい神学論争がいかにして、人間の<個>を確立するに至ったかを解説する本でした。正直、今の自分の力量で読めるような本ではありませんでした。しかし、ギリシャ哲学やキリスト教を多少はかじっていたので、部分的に理解しながら本書と格闘し、なんとか読了に至りました。ギリシャ教父の教理問答、東方教会、公会議、プロチノスらの新プラトン主義、三位一体、ペルソナ、キリスト教異端派の知識があれば、本書は理解出来ると思われますが、まずはそれらの前提知識を学ぶのに苦労すると思われました。2024/04/12

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