内容説明
一特派員がたどり着いたベトナム戦争の真実。
すでにAPの記者たちが打った電報のカスを、まるで残飯を恵んでもらうような調子で拝読させてもらう自分の姿が、私には全然気に入らなかった。(中略)心の中で固く決心した――彼らの世話になんかなるものか、おれはおれの情報源と判断で対等に仕事をしてみせる。(本文より)
新聞記者として戦地に赴任した著者は、特約を結んでいるアメリカの通信社からの情報や、ベトナム政府の公式発表、米軍のブリーフィングなどを鵜呑みにするのではなく、自分の足で開拓したニュースソースや自身の臭覚などを頼りに、ベトナム戦争の“真実”に迫ろうとする。
のちに芥川賞を受賞する作者の、原点ともいえる作品。
感想・レビュー
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ゆうろう
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新刊本なんで、てっきり半世紀ほど前のベトナム戦争時の報道を現代の視点から論じる類いかと思ったが、初出は1966年の復刻版とのこと。著者は後に芥川賞作家となるそうだが、確かにこの文章を読むと特派員のルポというよりは、自分自身のチマチマした思い(失礼)を記す作家の方が性に合っている気がする。俺自身はその方向性は好きではないが…。しかし、当時のサイゴン特派員の駐在期間がたった7ヵ月とはあまりに短くないか?P170他で若き石川文洋氏を好意的に取り上げている点が良い。P161、183等の論考にも納得した。 2023/12/31