内容説明
□絢爛たる宮廷生活、吐露される人生の憂愁□
『源氏物語』という世界史的作品を生んだ紫式部は、平安王朝の実像を後世に伝える貴重な日記も遺していた。
敦成[あつひら]親王の誕生を中心に御堂関白家の繁栄を描く本書は、最盛期の平安朝宮廷の生活絵巻であり、作者の複雑な心境が吐露される貴重な文献でもある。
道長との歌の贈答、中宮彰子への新楽府御進講、和泉式部や清少納言などに対する辛口の批評、一条天皇の行幸……
宮廷社会を舞台に繰り広げられる儀礼や賀宴の日々を見つめながら、紫式部は自己を冷厳に凝視し、憂いに満ちた内面を語ってもいる。
一人の平安びとの精神的軌跡が作品として昇華された日記文学を、全訳注で味読する!
*本書は、2002年に講談社学術文庫のために訳し下ろしされた『紫式部日記』上下巻を一冊にまとめ、新版としたものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NORI
14
敦成親王(後の後一条帝)誕生前後について書いた日記。藤原道長に記録を依頼されたらしい。解説も詳しく、大変勉強になった。 おめでたい儀式の日も、メインイベントの記述はそこそこに、同僚女官のオシャレのことばかり書いていたりして、彼女の興味関心のありようが伺える。でも、記録係として、それで良かったのか? 中でも、宰相の君(藤原豊子・藤原道綱の娘)推しが強い。相当カワイイ人だったようだ。ちなみに、この豊子の祖母が、蜻蛉日記作者。私はその祖母推しです(笑) 大河ドラマで、この時期をどう描いてくるのか今から楽しみ。2024/03/21
なーこ
2
千年前の人の日記が読めるなんてすごいなぁと。有名な清少納言や和泉式部の批判はほんの数行でメインは中宮彰子の出産記録。『光る君へ』でも描かれた五節の舞姫の記述など、平安時代の宮中行事や生活を感じられてよい。「何かと人を非難し、我こそと思っている人の前では口をきくのも億劫」「自分を賢いものとして他人をないがしろにし、世間を非難するところに(当人の)心の程度がはっきり現れて見えてくる」など共感しきり。親しい女房の昼寝姿があまりに可愛らしくて口元をおおっている衣をひきのけて声をかけて起こしてしまうとか、おちゃめ。2024/01/27
竹鶴六
0
時代劇用に。四五から五五が非常に興味深い。源氏物語作者の人間洞察が遺憾なく発揮されている。宮仕えに慣れない自分と、しかし確実に影響を及ぼしている部分もあり、そのような葛藤も見て取れる。2024/02/22