内容説明
□絢爛たる宮廷生活、吐露される人生の憂愁□
『源氏物語』という世界史的作品を生んだ紫式部は、平安王朝の実像を後世に伝える貴重な日記も遺していた。
敦成[あつひら]親王の誕生を中心に御堂関白家の繁栄を描く本書は、最盛期の平安朝宮廷の生活絵巻であり、作者の複雑な心境が吐露される貴重な文献でもある。
道長との歌の贈答、中宮彰子への新楽府御進講、和泉式部や清少納言などに対する辛口の批評、一条天皇の行幸……
宮廷社会を舞台に繰り広げられる儀礼や賀宴の日々を見つめながら、紫式部は自己を冷厳に凝視し、憂いに満ちた内面を語ってもいる。
一人の平安びとの精神的軌跡が作品として昇華された日記文学を、全訳注で味読する!
*本書は、2002年に講談社学術文庫のために訳し下ろしされた『紫式部日記』上下巻を一冊にまとめ、新版としたものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
269
寛弘5(1008)年の秋から同7(1010)年正月まで。全体はもっとあり、他は散逸したとの説もあるが不明。そもそも日記とはいっても、近代以降のそれとは、そのあり方も意味も違う。また、王朝期のものでも、『土佐日記』、『和泉式部日記』などいくつもが残されているが、それぞれにその性格はかなり違っている。さて、この『紫式部日記』だが、後半には作者自身の感想や考えが示される部分が多くなるが、前半では宮中の宮仕えの記録といった趣きが強いようだ。中でもハイライトは敦成親王(後の後一条天皇)誕生の前後である。⇒ 2024/10/14
優希
38
紫式部の貴重な日記を読めることが嬉しいです。平安王朝の空気感が伝わってくるようでした。メインは一条天皇の出生の記述ですが、宮廷を舞台に、日々を生々しく描いているという印象を受けました。2024/04/30
NORI
14
敦成親王(後の後一条帝)誕生前後について書いた日記。藤原道長に記録を依頼されたらしい。解説も詳しく、大変勉強になった。 おめでたい儀式の日も、メインイベントの記述はそこそこに、同僚女官のオシャレのことばかり書いていたりして、彼女の興味関心のありようが伺える。でも、記録係として、それで良かったのか? 中でも、宰相の君(藤原豊子・藤原道綱の娘)推しが強い。相当カワイイ人だったようだ。ちなみに、この豊子の祖母が、蜻蛉日記作者。私はその祖母推しです(笑) 大河ドラマで、この時期をどう描いてくるのか今から楽しみ。2024/03/21
真琴
11
主家である御堂関白家の慶事(敦成親王誕生が主)や同僚女房などの容姿や宮中での居心地の悪さなどが記される。式部の特命として、日記(記録)の執筆であったり中宮の教育係であったりと様々な説があるのだと知りました。同僚女房では、藤原道綱の娘(豊子)と親交が厚かったそうです。2024/05/15
ポメ子
8
原文、訳、解説があるので、当時の言い回し、日記の内容、時代背景,風俗が同時に知れて嬉しい。 他の女房についての手厳しい批判もあるが、今と処世術についての考え方に大きな差がないのが、興味深かった。2024/11/12