内容説明
怪の狩人が紡ぐ血腥い実話奇譚!
「見るな。見たら終わるぞ」
背中で、たった今埋めた
内臓を啜る水音がチュルチュルと…
――「あの山のコンコンさん」より
街と山とを股に掛け、とびきり危険な怪を獲る――
怪談狩人が捌く禁忌の腸!
普段は街で働き、時折山に入って猟をする。
ある日は人と会話し、また別のある日は獣の呼吸を聞く。
そして、そのどちらからも怪を蒐集する……異色の女流・若本衣織が放つ生々しき実話怪談集。
●貧しい一家が外食をする晩、家に恐ろしいモノがやってくる…「寝ずの晩」
●自宅の玄関に忌中札を貼る奇妙な夢。夢は意外な結末に繋がって…「忌中札」
●物理的には何ら問題がないのに、ひどい傾きを感じる新築の家。
古地図を紐解くと忌まわしいマークが…「傾く家」
●猿猟を専門とする父とその息子が受けた凄絶な呪いの 末…「飛び石」
●船に獣を乗せてはいけない漁師の掟。
禁を破った時に聞こえてきた奇妙なお囃子と宝船の姿…「捌」
他、生き血滴る21話収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
45
神沼三平太さん激推しの「とんでもなく厭な怪談を話す女」こと若本さんの単著です!まえがきにあるように「あわい」に起こる怪異をテーマにしているので、山・里山の話多めです。中でも訳分からず不気味だったのは、東京へ出た親友から送られてきた切符を手に上京してみると、東京駅に迎えの車が来ていて、15分ほどで人家も見えない場所の一軒家へ連れていかれる話。引き止める友人の言を固辞し、どうにも不気味なその家から逃れるように出てみると、そこはなんと東京などではなく…こういう訳分からんのがほんと好き。2023/06/13
高宮朱雀
23
山や里といった集落系が舞台の実話が多かったように感じられる。長年そこで暮らす人達には、その場所で延々と受け継がれて来た多くの決まり事や禁忌があり、それを敢えて侵すと良くない事が起きただろうし、仮にそうした事がなくても、起きないように現在進行形で口煩く注意喚起しているのだと思う。 水を好んで霊は集まると聞いた事があるが事実、山にも水場はある訳で、寧ろ海よりも危険を孕んでいる部分が大きいのではないか?触らぬ神に祟りなし、頭と胸に留め置かなければならない。厄を避けられるなんて例外はまずないと考えて良いだろう。2023/07/19
柊よつか
15
共著「玄室」で凄さを感じた若本衣織さんの単著。怖さ、仄暗さ、得体の知れなさ。各話に没入させる構成力や文章力。最後まで惹きつけられたまま読了。前半は、暗に示された可能性にゾッとする話が多い。「寝ずの番」の兄、「盆踊り」の死因、「自分の幽霊」の姉の優しさ、「あの子の部屋」の本当の死者、「襦袢」の位牌の主、「憧れの東京」の友人の今。奇妙なモノから積極的に声をかけられる「外階段」「やみ路」、悪夢に取り残された「忌中札」、「供養」に紛れ込ませた悪意も印象的。後半、人知の及ばぬ山や海のナニカの話も強い。満足の一冊。2023/08/12
流之助
14
けんちゃーんの話が怖く、また1番好き。ラストの話は、イノシシが4、義足の方が3、そして語り手が1で合わせて8ということだよね。9だったら両足か片腕が、10ならそれ以上ということ。怖いね。猿が祟る感覚は無かったけど狩猟に携わる方や地域性のものなのか。ホラーといえば犬猫(猫が多いかな)が多い印象だったので新鮮に感じた。2023/08/27
misui
14
重いとされる怪談は「死ぬ狂う消える」などと喧伝される割にはとかく上滑りしがちですけど、本書は怪の得体の知れなさがとてつもなく、ほとんど動物的なまでの実在感があって、たしかにこれは「死ぬ狂う消える」怪談だなと納得させられます。まるで肉食動物に貪り食われる人を目にしているよう。また、それを実現する筆力がものすごい。この一冊で怪談のステージがまたひとつ上がることでしょう。2023/06/05
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