トラスト―絆/わが人生/追憶の記/未来―

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トラスト―絆/わが人生/追憶の記/未来―

  • 著者名:エルナンディアズ【著】/井上里【訳】
  • 価格 ¥3,960(本体¥3,600)
  • 早川書房(2023/05発売)
  • GW前半スタート!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~4/29)
  • ポイント 1,080pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784152102362

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内容説明

1930年代、NY。金融の寵児、アンドルー・べヴルをモデルにした小説『絆』が出版されたが本人はこれに猛反発。自伝を秘書に代筆させる。その後秘書は当時の回想録を記し、数十年後、アンドルーの妻の日記を発見するが--。視点の異なる四篇からなる実験的小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

65
物語好き(特に『藪の中』が好きな人)には琴線に触れる本だろう。関係者から幾重にも語られる事象や人物。だがどれ一つとして正しいとは言えない。何故なら、人間が見聞し、情報を選び抜いた上で書く以上、絶対に客観的な事など、あり得ないからだ。本書は4篇で構成される。一つ目は世界恐慌を引き起こしたと目される主犯とその妻との関係性をモデルに書かれた小説「絆」。それを軸に二つ目はその反論として記録された「我が人生」。口述筆記で書かれており、中断が入る事がしばしば。物語としては落第点が着く程の無粋で無味乾燥さが極まる代物。2023/07/23

ヘラジカ

52
優れた文学の特質と言って思い浮かぶものの大半を備えた傑作である。タイトルの言葉に集約された確たるテーマ、非常に巧妙で独創的なプロット、それを肉付けをする強固なストーリーテリング等、感情的に揺さぶられる類の小説ではないが、読み進めるなかで何度も唸り声を上げてしまう程に精緻な作品だ。所謂”信頼できない語り手”の一歩先を行く複雑な構成が、読書の楽しみを生み出していると同時に、現実世界の女性の社会的存在感についても考えさせる。これぞ現代文学。「今何を読むべきか」と問われて、この長篇を挙げる読書家は多くなるだろう。2023/06/02

星落秋風五丈原

35
天性の才を持った男とその妻が栄耀栄華を極めるが、全て満たされたとは限らない。一世を風靡した夫妻の、巨万の富の代償が妻の精神崩壊だとでも言いたげな幕切れの、まとまった終わり方で、構成も良い。にも拘わらず、『絆』への反駁として、モデルとなった大富豪アンドルー・べヴルは自伝『わが人生』を刊行しようとした。美談で終わらせればよかったのに、なぜ?今度は秘書アイダの回想録『追憶の記』として登場する。秘書は現在作家となっており、中途半端な章や段落が散りばめられている、いかにも素人くさい『わが人生』に比べれば出来も良い。2023/10/19

特盛

22
評価3.7/5。図書館で偶然手にし最初ノンフィクションかと。分厚いが他の積読本を差し置き一気読み。2023ピューリッツァー賞も納得。中身は、20世紀初頭に金融界に君臨する大富豪と、死んだ謎めいた妻を巡る、藪の中的物語。「過去の人生」なんてどこにも存在しないと考えさせられた。記憶はドップラー効果を起こし変わる。他者による伝記は妄想ですらある。後は絆/連帯についても印象的。共通利益に基づく似非連帯・目的が失われた後に残る無関心と競争。金融と文学は食い合わせ悪そうなのにうまく料理したなぁ。2024/04/08

アヴォカド

19
なにこれ、面白かったー!よくできてる。タイトルと表紙の写真から、金融実録物?などと勝手に思いながら、その先入観を払い除けられ(それさえも仕掛けの1つだった?)、『絆』面白いけどふうんそれだけ?と思っていると、『我が人生』でどうもそうじゃないな、と妙な心地がしてくる。さらに『追憶の記』で捻られ、どんどん加速して面白くなり、『未来』で唸る。唸ったし、久々に悪寒もしましたよ。小説を読む時に私は(読者は)何を信じているのか。そこに何があるのか。もしかしたら、早くも、今年のベストかもしれないなあ。2023/06/24

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