内容説明
よい友とは、何をしてもよい。絶交してさえもよい。――
衝突と復縁を繰り返しながら、生涯にわたる友情を育んだ二人の作家。
表題作は、幼少期の出会いから「白樺」での文学修業に至る青春期までを辿った、里見弴幻の代表作。〈白樺派の青春群像を描いた重要文献〉にして、のちの『暗夜行路』成立にも多大な影響を与えた作品でありながら、連載原稿の紛失事件により未完に。これまで全集等でしか読むことはできず、文庫化は今回が初となる。
その他、「城の崎にて」で知られる志賀の山手線事故の 末を記した「善心悪心」、鳥取・松江旅行の回想「世界一」「或る年の初夏に」など、若き志賀との交友に関する小説・随筆の主要作品を初めて一冊に。二大文豪の出発点をあらためて見直す文庫オリジナル。
【目次】
[小説]
君と私(1913)
善心悪心(1916)
世界一(1920)
或る年の初夏に(1917)
幸福人(1917)
失われた原稿(1916)
[随筆等]
春の水ぬるむが如くに(1924)
志賀君との交友記(1935)
弔辞(1971)
志賀君との間柄(1974)
あとがきより
解説=麻井朝
里見弴・収録作品関連年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
6
幼い頃から親しかった志賀直哉と里見弴が、長じて八年にわたって絶好していたことに、今を生きる人々がどれほど興味をもつか、やや疑問なのですが、本書ではその原因となったといわれる小説、あるいは関連事件が描かれた小説が集められています。白樺派のお坊ちゃまの青春群像という面は否めず、いろいろと大目に見ないと読むのは苦しいのですが、それにしても、本書に集められた作品の、小説としての質は残念ながら、そうとう低いのではないかという感じがします。42024/07/25
chuji
4
久喜市立中央図書館の本。2023年5月初版。著者による小説・随筆のうち、「志賀直哉との交流」を題材とする各六編の作品集で中公文庫オリジナル。志賀直哉の『暗夜行路』等の著作は若い頃読んだけど、里見さんの著作は初読みかもしれません。2023/07/27