内容説明
宗教史研究の碩学が愛してやまない先達に捧げる人物エッセイ。一人の師も弟子も必要とせず独立独歩の精神で生きた棟方志功、筑豊の子どもたちから古都奈良の仏像へ「命がけの転向の旅」をした土門拳、借り物の枠組みでなく自前の哲学、歴史観、人間観を追求した梅原猛、西洋と東洋のあいだ、科学と宗教のあいだに橋をかけるという難事業に取りくんだ河合隼雄。
生きた世界も時代も異なるが、芯の部分において彼らに共通するものを見出しつつ、それぞれの魅力を味わい深い筆致でつづる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
102
忘れえぬ人とは、山折先生と同じ東北人である棟方志功さんと土門拳さん(縄文の鬼)、ともに京都で活動した仲間の河合隼雄先生と梅原猛先生(都の妖怪)。四人の評伝ではあるが、山折先生独自の視点が鋭い。釈迦の存在を全く意に介さない棟方「釈迦十大弟子」の不思議、なぜ「筑豊のこどもたち」から「古寺巡礼」に転向したかとの土門への問い、能の「諸国一見の僧」の姿に準えた河合先生のイメージ、そして何より、「梅原先生はアンチ京都学派だ」とする断定の大胆さ。敢えて刺激的な切り口を通して、四人の鬼・妖怪の本性が抉り出される。面白い。2023/12/08
ミガーいち
2
それぞれの人が魅力的に描かれていた。星32023/09/02
マウンテンゴリラ
2
本書に描かれている著名人は、かならずしも、私の好みに合うわけでも、業績等を詳しく知っているわけでも無い。が、そういう人たちに対するリスペクトが自然に湧いてくるようなエッセイであった。何に対してのリスペクトかと言われると、無知な私にとって、それぞれの業績に対して、というものでは勿論無い。また、本書は、それを称揚する内容のものでも無い。では何に対してのものかと敢えて言えば、それぞれの個性、それも常識に対する収まりの悪さ、とでも言うべき批判的個性に対してと言えるかも知れない。→(2)2023/07/27