内容説明
大奥での秘められた遊び、女学生と男子学生の春、国のためと言う看護婦と軍人、やんごとなき姫君のセンセーショナルな事件まで。春画に描かれたのは「わらい」のみにあらず。嫉妬、妄想、病に犯罪……。絵画と古典籍から時代の空気を紐解けば、愛欲だけでは語れない世界がそこにはあった。あなたの常識をひっくり返す14章。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
61
葛飾北斎、渓斎英泉らのデフォルメされた性器や男女のまぐわりの春画。カラー絵図とともに、くずし文字を解読しその解説が春画フリークの女性による熱のこもった文章で綴られている。江戸時代の春画の題材になっているのは後家、生娘、遊女、尼、包茎など。明治期の春画には、「女学生」「看護婦と軍人」といった珍品も出てくる。女性絵師が描いた春画があるのかは知らぬが、多くの作品は男が描き、欲望を肥大化させた妄想のようなものだ。そこが笑える。これを読んで2015年にあった永青文庫の春画展を見に行くんだったな、と思った。2024/01/22
kei-zu
25
TBSラジオ「アトロク」で著者が本書を紹介していたのを聴き、手に取りました。春画を題材として、江戸・明治庶民の性への関心を解きほぐします。女性としての視点での、からっとした文章が楽しい。 江戸時代は比較的「おおらか」であった性の描写が、明治に入ってからは多少窮屈になる時代の変遷があるといいます。それでも、制服姿の女学生や看護婦などの職業女性に向けられる性的関心は今も昔もとの指摘には、当方男性としては、いやまったくです。2023/09/24
そうたそ
11
★★★★☆ 京都の細見美術館で開催されていた春画展に行ってから、すっかり春画にハマってしまった。春画の持つ芸術性、明るさ、ユーモア。それだけでなく、春画から見えてくる当時の文化、風俗、社会規範もまた興味深いところ。本書は春画について、いわゆる学術的には語られるところのない、ニッチな部分に焦点を当て、春画に込められた欲情を紐解く一冊。著者の春画への愛が感じられる内容で、それだけにその著者による考察も面白い。春画=十八禁であることは確かなので広くは薦めにくいが、少しでも興味あれば是非おすすめしたい一冊。2024/11/20
クサバナリスト
9
看護師、女学生等、いつの時代にも、その対象になってたのかと分かった。2023/07/30
かやは
8
「おおらかで博愛に満ちていてめでたい」だけではない、春画について語られた一冊。包茎の治し方まで載っていたとは知らなんだ。江戸時代の性の奔放さや自由な価値観を象徴しているかと思われている春画。だが丁寧に読み解いていくと、現代も変わらないジェンダー的に誤った捉え方も見えてくる。著者曰く、ジェンダー史で語られる春画はまだないとのことなので、今後もっと多様な春画の見方を提示してもらいたいと思った。2024/01/17