ちくま新書<br> 天武天皇

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ちくま新書
天武天皇

  • 著者名:寺西貞弘【著者】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2023/05発売)
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  • ISBN:9784480075574

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内容説明

律令国家の基礎を築き、記紀の編纂に着手した天皇として広く知られる天武天皇。だが、その前半生については不明な点が多い。その生涯を明らかにしつつ、天武天皇の敷いた皇親政治(天皇と皇親〔皇族〕を主体とする政治体制)の実態について考察。さらに天武天皇が導入しようとした律令制度はどのようなものか、なぜ導入しようとしたのかを浄御原令をもとに検証。天武天皇が深く関わった仏教政策の意味についても検討する。天武天皇の実像と古代政治体制の実態を明らかにする入門書。

目次

序章 本書の構成と課題/天武天皇研究と本書の構成/Iの課題──生涯/IIの課題──皇親政治/IIIの課題──律令制度の導入/I 生涯/第一章 天武天皇の前半生/1 両親と兄弟姉妹/大海人皇子はいつ生まれたか/天智・天武両天皇は約一〇歳差/2 天智朝における立場の変遷/婚姻の背後にある天智天皇の思惑/百済遠征の失敗/懐柔策としての官位改正/天智天皇の即位と大海人皇子の立太子/疑心暗鬼に満ちた共治体制/3 天武天皇と大友皇子/天智天皇の病に伴う大海人皇子の動き/大友皇子の出自とその動向/大友皇子はなぜ太政大臣に任官されたか/「儲君」をめぐる大海人皇子の思惑/不改常典とは何か/4 壬申の乱緒戦の軍事動員/空位状態における政情不安と吉野方の軍事動員/近江方の軍事動員と尾張国司の苦悩/私的紐帯による勝利と官僚機構の脆弱性/5 本章のまとめ/第二章 天武天皇の時代/1 天武天皇前半の時代/后妃子女列記記事と即位礼/功臣の褒賞/官位改正と律令制における厳しい態度/祭祀と税制/官僚への飴と鞭/2 天武天皇後半の時代/菟野皇女の立場の大きな変化/仏教関連の政策/律令選定・記紀編纂・造都/族姓への配慮と唐風化への強い意志/細部にわたる命令と天皇の崩御/3 天武天皇の殯宮儀礼と大津皇子事件/殯宮儀礼の経緯/僧尼の深い悲しみ/大津皇子事件をめぐる人々/行心に対する極めて峻厳な処分/4 本章のまとめ/II 皇親政治/第三章 天武朝の皇親たち/1 天武天皇の后妃と皇子/后妃子女列記記事をめぐって/后妃および子女について/2 菟野皇女の立后/吉野の盟約を契機として/皇室全体の母としての菟野皇女/後宮の整備と権威の巨大化/3 天武朝の皇子たち/皇子たちの生年と叙位の時期/忍壁皇子の生年/磯城皇子・芝基皇子の生年/4 天武朝の諸王たち/小紫位と諸王位/美濃王の活躍ぶり/皇親と臣下の境界線をさまよう端境人として/5 皇親概念の確立/王と名乗る者の状況/皇親と臣下のボーダーライン/八色の姓の制定/皇親の概念の明確化/6 本章のまとめ/第四章 天武朝政治の担い手たち/1 公卿大夫/政治に携わる皇親たち/臨時の官もしくは地方派遣官として/大豪族たちの待遇/2 高市皇子の政治参加/壬申の乱における高市皇子の動き/高市皇子の拝朝/皇親の扱われ方の変化/3 草壁皇子と大津皇子/ふたりの皇子はなぜ別行動を取ったのか/公卿に列せられなかった草壁皇子/大津皇子の類まれな資質/4 大津皇子「朝政を聴く」/大津皇子の政治的立場とは/慣例となった二一歳での政治参加/5 本章のまとめ/第五章 皇親政治の本質/1 天武天皇一四年冠位制の概要/日本固有の倫理観の重視/皇親と臣下の対応関係/2 天武天皇一四年皇親冠位の方向性/持統天皇による大幅な改正/正冠と直冠を峻別した意図とは/3 皇子たちの居住地/皇親はいつから宮都に居住するようになったのか/宮都近くに居住する意味/私有地に代わる経済基盤を求めて/冠位制と食封制度の関連性/4 皇親序列化と天皇権力/反逆者たる皇親を匿う豪族/皇親と豪族のパワーバランスの逆転/天皇予備群としての皇親/5 皇親政治の終焉/冠位による皇親の序列化/知太政官事とは何か/皇位を諦めさせる手段として/6 本章のまとめ/III 律令制度の導入/第六章 天武朝の政治組織/1 天武紀にみえる官司/持統天皇三年までの官司/「省」と「官」/官・職・寮の具体的な職務内容/2 天武朝の太政官組織/宮内官の重要性/弁官に冠された「大」とは/浄御原令による官司制度の大きな変化/3 宮処の模索/都を複数つくろうとした天武天皇/藤原京遷都に至るまでの経緯/天武天皇が遷都を決意した時期/4 地方組織/地方国の成立/筑紫大宰・吉備大宰とは何か/吉備国の分割・設置の時期/国司の支配領域の画定/支配領域をめぐる国司と国造の攻防/5 本章のまとめ/第七章 天武天皇と律令国家/1 律令国家への胎動/律令国家への起点としての推古朝/大化改新詔の背景/有間皇子の謀反にみる租庸調税制/浄御原令制定までの経緯/2 大宝令と浄御原令/浄御原令の歴史的位置づけ/行幸好きであった持統天皇/大宝令による天皇の権威の強大化/節日・行幸の扱いにおける両者の相違点/3 浄御原令の内容/戸令の条文/考仕令の条文/浄御原令にみる官位相当制/4 天武朝の律令的諸規定/皇子らの努力による急速な法整備/天武朝における律令的な諸規定の集大成として/5 本章のまとめ/第八章 天武天皇と仏教政策/1 天武紀にみえる仏教統制政策/仏教統制政策の時系列的な流れ/僧綱の任命/僧尼の生活についての細かい規定/2 天武朝の仏教規定と僧尼令/数多くの禁止事項/巷間往来の作法と活動の制限/犯僧に対する刑罰について/3 その他の推測できる統制策/外国寺条と外国の仏教/畿内・畿外における仏教事情/山林修行に対する厳しい規制/4 天武朝の仏教諸規定と僧尼令の編目/僧尼令の編目と対比して/仏教界に対する俗(為政者)の警戒と対策/5 天武朝の仏教政策の意義/焦眉の課題としての僧尼の管理/出家者が政界に跋扈することへの恐れ/6 本章のまとめ/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

terve

23
天武天皇の前半生は意外と分かっておらず、第一章はそれを復元するという意欲的な試みだと思われる。第二章は、自明だと思われていた皇臣とは何かについて述べ、皇臣を冠位によって序列化することこそ皇臣政治の本質であるとしている。第三章は浄御原令を復元しているが、若干強引な点が見られる。とはいえ、推測せざるを得ない中、壬申記などの資料に基づいて考察されており、誠実な一書であると思われる。仏教政策については、自身の経験から構想されたという点について、なるほどと思わされた。2023/08/06

新父帰る

7
2023年5月刊。表題は「天武天皇」と謳ってあるが、天武時代の政治の担い手にもスポットが与えられている。その一つが皇親政治と呼ばれるものだ。壬申の乱以降、菟野皇女の立后については吉野の盟約以後を立后としている。皇子(高市皇子、川嶋皇子、草壁皇子、大津皇子、舎人皇子)についてもそれぞれ一人ひとり事績を追っている。律令体制の完成に向けて打ち出した浄御原令の編纂は天武時代の最大の事績ではないか。天武天皇は大海人皇子の時に出家されているが、その時の経験を生かして僧尼令を制定し、仏教統制政策を取ったことも特徴だ。 2023/07/01

KT1123

4
読み始めてから中断したり再開したりで、1年以上かかっちゃいました^^; 天武天皇その人の生涯より、そのなしたこと、なそうとしたこと(皇親政治と飛鳥浄御原令)に重きを置かれた論文的な感じで、私にはかなり難しかった(>ω<)2024/08/12

左近

4
壬申の乱で皇位を奪取し、豪族の影響力を排除した皇親政治を行った天武天皇。その実態を考察し、律令国家の成立過程を追う。普段「自分は歴史が専門だったから」とか偉そうに口走っているが、研究は日進月歩だし、時間が経てば基礎知識も忘れるしで、こうした本を定期的に読むと、色々と勉強になって楽しい。応神天皇五世孫で北陸から畿内入りして即位したという、何やら怪しげな出自の継体天皇以後は史実性が高まるとされるが、天武天皇は、その継体天皇から数えて五世孫に当たるという事実にハッとさせられる。今まで全く気付いていなかった。2023/07/11

眉毛ごもら

3
天武天皇の生涯および持統文武期〜奈良時代初期。皇親政策、浄御原令の大宝律令養老律令との比較検討、僧尼令等で律令関係の記述がメイン。讃良様の立后が吉野の盟約時まで繰り下がるのではないか説は面白かったし、先行研究や最近出た新書などの比較検討ガンガンやってて議論の活発化はもっとやれとなった。大津誑かした僧の遠国への追放は僧限定方の適用というよりはパンピー向け流罪と同等の罰則適用な気がするけど。初めの方のページに元明と元正の誤記があったのでそこ修正必要かな。正誤はともかく律令関係苦手な私でも楽しく読めましたな。2023/06/15

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