内容説明
ベルリンで一人暮らしをする美砂は、隣人Mさんに誘われて太極拳学校へ。様々な文化的背景をもつ人々との出会い、第2次大戦前後のドイツと日本の歴史、国からの追放、女性の目から見た名作の読み直し、世界文学の旗手による初の新聞連載小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
200
多和田 葉子、4作目です。ドイツで暮らす著者の初の新聞連載&私小説的な物語でした。しかしながら、オチがないような気がしたので、この物語はまだ続くのでしょうか❓ ドイツで、「魔女の一撃」という表現が、「ぎっくり腰」の事だと初めて知りました。 https://www.asahi.com/articles/ASQ9P62XGQ9LUCVL019.html2023/05/26
榊原 香織
75
ドイツで一人暮らしの日本女性が、ひょんなことから太極拳を始める(題名は太極拳の一つの技です) 面白い。ドイツて濃い人が多いのかな。とてもインターナショナル。 隣人とこんな会話するのかな、と不思議だが、ドイツ語ならありかとも思える。日常にさらりと不思議が混じるのもこの人らしい2023/06/05
ネギっ子gen
68
【書くというのは文字を生み出すことで、これほど心を満たしてくれる行為はなかった】『朝日新聞』に連載中に既読だが、まとめて読むと実に面白い本でした。題名に引きずられ幽幻の地を彷徨うが如き感覚というか――。帰国した夫と別れ、ベルリンで一人暮らしをする翻訳家・美砂は、隣人Mさんに誘われ太極拳学校へ。<翻訳作業のいいところは、自分の頭の中がからっぽに感じられる日でも、自分の好きな作者の書いた文章はそこにあり、それを消化して、たとえ消化しきれなくても、とりあえず自分の文章にして書くことができることかもしれない>。⇒2023/10/11
NAO
66
ベルリンで一人暮らしをしている日本人女性が隣人に誘われて太極拳を習い始める。中国人女性が主宰しているその太極拳のクラスには、大金持ちのロシア人未亡人、森の中で菓子屋を開いている女性、外来語である英語で話すときは優しい感じなのに母国語のドイツ語で話すときはきつい感じになる女性、などさまざまな女性たちが集っている。主人公は徐々に彼女たちと会話を交わすようになり、彼女たちの背景を知っていく。ホモセクシャルの隣人も女性たちも、出自がややこしく、人間関係につまずいている。⇒2023/07/13
万葉語り
52
ベルリンで翻訳をしながら生活している美砂が、隣人のMさんに誘われて太極拳教室に通うことになる。そこでの出会いと日常は、教養と多様性に溢れていて、日ごろ狭い世界で凝り固まった価値観に縛られ、不勉強な自分に気付かされる。多和田さんの作品はいつだってそんな冷静な厳しさと、知識や経験の圧倒的な必要性を感じさせてくれる。刺激的で面白かった。2023-782023/06/25