文春e-book<br> 極楽征夷大将軍

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文春e-book
極楽征夷大将軍

  • 著者名:垣根涼介【著】
  • 価格 ¥2,200(本体¥2,000)
  • 文藝春秋(2023/05発売)
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  • ISBN:9784163916958

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内容説明

史上最も無能な征夷大将軍
やる気なし
使命感なし
執着なし
なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?

動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。
足利直義は、怠惰な兄・尊氏を常に励まし、幕府の粛清から足利家を守ろうとする。やがて天皇から北条家討伐の勅命が下り、一族を挙げて反旗を翻した。
一方、足利家の重臣・高師直は倒幕後、朝廷の世が来たことに愕然とする。
後醍醐天皇には、武士に政権を委ねるつもりなどなかったのだ。
怒り狂う直義と共に、尊氏を抜きにして新生幕府の樹立を画策し始める。

混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、
何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか?
幕府の祖でありながら、謎に包まれた初代将軍・足利尊氏の秘密を解き明かす歴史群像劇。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

430
足利尊氏と弟・直義の少年期から亡くなるまでの壮大なドラマだった。まるで二人のやり取りを見てきたように描写する垣根涼介。超長編作も、飽きずに一気読み。さすが直木賞受賞作。「中身のない虚無だからこそ~、頭の中が頭陀袋同然だからこそ、かえって人に受け入れられる」尊氏のとらえどころのない魅力が、ストンと腑に落ちた。2024/01/01

starbro

413
垣根 涼介は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。足利尊氏は、当然知っていますが、足利尊氏・直義兄弟の建幕物語は初めてです。足利尊氏の性格が本書の通りだとすると源頼朝とは対極のような気がします。読み応えがありましたが、フォント小さめ&二段組&文字密なので、還暦手前のオジサンには辛い読書でした。足利尊氏・直義兄弟が鎌倉で青春時代を過ごし、足利尊氏が一時期、鎌倉殿と呼ばれていたとは思いませんでした(驚) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639169582023/06/02

パトラッシュ

370
小沢一郎は海部俊樹を首相に担いだ時「神輿は軽くてパーがいい」と公言したが、確かに一面の真理だ。周囲の意見を聞かず自説に固執する上司より、やりたいようにやらせて責任は取ってくれる上司を部下は求める。本書に描かれる足利尊氏は軽すぎてパーすぎて無欲だが戦争だけはうまく、全てを思う通りに動かそうとした上に恩賞をケチった後醍醐天皇と比べ魅力ある大器とされた。尊氏を補佐した直義と師直は理想に囚われて政権分裂を招き、共に不幸な最期を迎えた。始末に困る極楽トンボが生き残れたとは、政治家の権力闘争がアホらしく見えてしまう。2023/06/14

bunmei

358
足利尊氏が、室町開幕に至る政権争いの紆余曲折を綴った歴史大作。尊氏と言えば、ざんばら髪の騎馬武者、勇猛果敢な武将のイメージ。しかし本作では、執着心もやる気もなく、怠惰な武将として描かれている。そんな尊氏が征夷大将軍まで上り詰めた経緯を、尊氏のブレインとなって政権を切り盛りしてきた、尊氏の弟直義と足利家の重臣高師直の活躍を中心に描いている。無能な尊氏を担ぎ上げ、カリスマ的な影響力で、直義等が武士の世の再建を目指す。その中で血で血を洗う動乱の世を、懸命に駆け抜けていく武将としての悲しい運命に、胸が打たれる。 2023/08/05

修一郎

299
垣根さんの歴史小説はぜんぶ面白い。はっきり人物を描くからだ。やる気も執着心もなく恬淡として生きた足利尊氏が人の好さと担がれやすさで征夷大将軍になってしまった。フィクションと思ったらエピソードはほぼ史実。戦上手なのはどう見ても楠木正成であり新田義貞なのに最後に勝ってしまう歴史の面白さよ。それにしても後醍醐天皇を追い出したのちもこんなゴタゴタ続きだったのは知らなかった。こんな脆弱な政府ができた経緯にも詳しい。足利尊氏直義兄弟と高師宣で作り上げた室町幕府創設物語。ガッツリの読み応え,もちろん今月のベストだ。2023/10/31

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