内容説明
主人公は、中学校の保健室の先生にして魔女。
自分が考案する「おまじない」を流通させ、もっとも定着させた魔女が選ばれる七魔女決定戦に参加している。
今日も魔女は、保健室にやってくる生徒たちの悩みをきき、それを解決する「おまじない」を授ける。悩みによりそう短編集。
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わたしは魔女だ。
保健室の先生でもある。
雄花市にある唯一の公立中学校で、二年前から働いている。
わたしが勤務している雄花第一中学校には、一年生が四十一人、二年生が六十人、三年生が五十二人、あわせて百五十三人の生徒が在学中だ。
どの子も素直で、礼儀正しくて、目に入れても痛くないほどにかわいい---わけがない。
保健室に通ってくる子たちは、基本的に一筋縄ではいかない子が多い。ひねくれ者だったり、ろくにあいさつもしない子だったり、なにが理由で保健室にきたのかすら伝えられない子もいる。
もちろん、無防備で甘えん坊な子も少なくない。それでも、どこかさみしそうな顔をしているのだ。
そういう子たちは、なにかをだれかに話したいから保健室にくるのだろう、と考えて、わたしは根気よく、彼らの話をきく。
江口マリエの場合は、こんな話だった。(本文より)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
78
YA。七魔女決定戦は、多くの「おまじない」を世間に定着させた魔女が選ばれる。もし他の魔女が作ったおまじないに文句があれば魔女同士の決闘(肉弾戦)でその是非を問う。「みんちゃん先生」と呼ばれる養護教諭は、魔女だと言うことは秘密にして、相談に来る生徒たちに「おまじない」を教えている▽自分のきらいなところが消えてなくなるおまじない/胸が小さくなるおまじない/お母さんにひどいことをいわなくなるおまじない/目が大きくなるおまじない/特別な人になれるおまじない/きらいな人を不幸にするおまじない▽魔女目線はかなり上から2023/05/01
れっつ
43
学校の保健室の先生は、実は魔女だった!しかも悩み解決におまじないを授けてもらえる、とは子どもたちの心を掴むであろう興味そそられる設定だ。悩める生徒たちのそれぞれのケースに分かれた短編集は、わかりやすく端的で、今どきの子どもたちの特徴的な様子、彼女たちの率直な気持ちを表現しつつ、身近な社会問題やそれに対する考え方、対処法、してはいけないこと等が、さりげなく盛り込まれている印象。先生の魔女界での話も通しで出てきて、きっと子どもたちは共感したりワクワクしたり時にちょっと後ろめたく思ったりしながら読んでくれそう。2022/12/14
ケ・セラ・セラ
30
魔女と呼ばれている保健室の先生かと思ったら、実際に養護教諭であり魔女とは。6話からなる短編集。保健室にやってくる中学生の悩みはリアルだ。性犯罪やストーカー、無責任なSNSの被害者にも加害者にもならないようにと真摯に向き合った配慮対応が素晴らしい。冷静で優秀な養護教諭。おまじないでも何でもいい、迷える中学生には魔法の言葉が、話を聞いてくれる存在が救いとなる。主人公のキャラがいい感じ。これは続きが出そうですね。読みやすく高学年から。2023/03/19
ほんわか・かめ
27
本物の魔女たちが人間界に紛れ込み、そのうちの一人が保健室の先生として勤務しています。魔女らしくおまじない系ばかりで行くのかと思いきや、ストーカー事件についてのケリをつけ方は養護教諭として流石でした!自分を特別な存在に置きたがる女の子の思考を地道に軌道修正していくのも教育そのものです。他人の不幸を願ってしまった女の子の後悔もわかります。もう魔女の設定要らないかも?小高〜2023/04/24
史
25
超すげぇ……。と語彙がぶっ飛んでしまうほどの衝撃が最序盤からやってくる。このタイトルで拳ですよ。度肝を抜かれるというのはこういうことなんだと。それでいて、きちんとヤング・アダルトで、ファンタジーな作風であるということ。石川宏千花先生の描く少年少女の妙はもちろんのこと、その魔女、養護教諭である大人もまた途上にいるということをきちんと描いている。導く者もまた日々学び考える、だけどそれを取り繕って接する、接しなければいけない難しさを事細かに書いている。この世界観の続編を是非読みたい。年間ベスト候補。面白かった!2023/01/22