内容説明
知的財産法の世界では、近年のめざましい技術の進歩を背景として、パブリック・ドメインとの境界線上における紛争が多発している。本書では、従来あまり重視されてこなかったパブリック・ドメインを中心に据えて、創作の奨励や産業・文化の発展のため、いかにしてパブリック・ドメインを豊かにし、その利用を確保するのかという観点から、各種の知的財産法の構築を目指す。
目次
第1部 総論
第1章 文化創出におけるパブリックドメインの役割──オープンソースソフトウェアとマッシュアップの事例[ブラニスラヴ・ハズハ(翻訳:津幡笑)]
I はじめに
II 著作権法に関する伝統的な見解の限界
III オープンな生産形態とプロプライエタリな生産形態
IV 結論
第2章 著作権法による自由[上野達弘]
I はじめに
II 3つの最高裁判決
III 考 察
IV おわりに
第3章 フランスにおける著作権と表現の自由の「公正なバランス」の探求──Klasen事件・カルメル派修道女の対話事件を中心に[比良友佳理]
I はじめに
II 従来の判例
III Klasen対Malka事件破毀院判決(2015年5月15日)
IV カルメル派修道女の対話事件破毀院判決(2017年6月22日)
V Klasen事件差戻控訴院判決(2018年3月16日ヴェルサイユ控訴院)
VI カルメル派修道女の対話差戻控訴院判決(2018年11月30日ヴェルサイユ控訴院)
VII おわりに
第4章 ダウンロード違法化拡大になぜ反対しなければならなかったのか?──インターネット時代の著作権法における寛容的利用の意義[田村善之]
I はじめに
II 改正の経緯
III なぜ反対しなければならなかったのか?
IV 改正法の解釈上の課題
第2部 著作物性
第5章 著作権法上のアイデアに関する一考察──アイデア・表現二分論におけるアイデア二分論の試み[金子敏哉]
I はじめに
II アイデア・表現二分論を巡る議論状況
III アイデア・表現二分論におけるアイデア二分論
IV おわりに
第6章 香りと味の標章性・著作物性再考──欧州の判決例等を手がかりに[駒田泰土]
I はじめに
II 香り・味の標章性
III 味の著作物性
IV 考察
V おわりに
第3部 著作権の保護範囲
第7章 著作権の保護範囲[田村善之]
I 序
II 類似性要件の位置付け
III 類似性の判断基準
IV 類似性要件の判断手法
第4部 著作権の制限
第8章 柔軟な権利制限規定の設計思想と著作権者の利益の意義[前田 健]
I はじめに
II 柔軟な権利制限規定にみる「著作権者の利益」
III 「柔軟な権利制限規定」の柔軟性
IV 条文の解釈
V おわりに
第9章 著作権の制限規定の立法をめぐる今後の課題──2018年・2021年著作権法改正を踏まえて[村井麻衣子]
I はじめに
II 2018年・2021年著作権法改正
III 著作権の制限規定の改正をめぐる傾向と今後の課題
IV おわりに
第10章 権利制限規定・法定許諾による著作物の利用と対価の還流──英豪両国の著作権法を手がかりに[小嶋崇弘]
I 問題の所在
II 英国著作権法におけるライセンス優先型権利制限規定
III オーストラリア著作権法における法定許諾
IV 若干の検討
第11章 著作権法における補償金スキームによる利益配分モデルの補完[孫 友容]
I はじめに
II 著作権法における補償金制度
III 補償金スキームのメカニズム
IV 補償金スキームの役割と課題
V おわりに
第12章 美術鑑定書判決以降における引用の裁判例に関する総合的研究[平澤卓人]
I はじめに
II 裁判例の判断枠組みによる分類と集計
ほか