内容説明
軍事大国の経済破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失…。アメリカの覇権が揺らぐなか、「帝国」復活を目指すかに見えるロシアの動き、そして米中「新冷戦」。来たる激動の国際秩序を見通すために知っておきたい、歴代14帝国「崩壊」の道程を第一線の歴史学・考古学者陣が読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nat
31
図書館本。世界史の知識が足りないことを痛感。難しかった。ヒッタイト帝国の崩壊の章では、ドイツなどの欧米の研究者から認められない日本人研究者の苦労が伝わってきた。また、考古学における発掘現場での地道な精査、検証の重要性も理解できた。他に印象的だったのは、アレクサンドロス帝国の崩壊の原因。アレクサンドロスが征服することには興味があったが統治することにはあまり関心がなかったこと。そして彼の早すぎた死、後継者がいなかったことなどが挙げられる。しかし、もし長生きしていたとしら、また違う歴史があったのかもしれない。2023/12/30
さとうしん
22
上巻は地中海周辺地域の古代帝国滅亡編ということになるだろうか。面白かったのは大村幸弘氏による第3章のヒッタイト編。地道な発掘作業と研究を積み重ねることで、ヒッタイトの滅亡について従来と全く異なる、小麦の生育不良による食料不足に原因があったのではないかという見解に至ったという。他の章も「海の民」の実像、アケメネス朝を征服したというより乗っ取ったという方がふさわしいアレクサンドロスなど、新たな知見が紹介されている。2022/07/02
鯖
20
カルチャーセンターでの講座を一冊にまとめた本。それぞれの章のラストに「もっと知りたい方へ」と参考文献が載っているのもありがたい。ヒッタイトの滅亡が従来の海の民によるものではなく(ヒッタイトの帝国終焉期の火災層から海の民の遺物は全く出ていない)、ヒッタイトが保有していた収穫量の多い小麦が周辺地域に広がっていき、ヒッタイトの力が相対的に落ちていったからというのが興味深い。ハプスブルクとオスマンが完全に崩壊してしまったのは、宗教と言語が寄せ集めだったからというのはなるほどな~と。下巻に続く。2023/04/07
ようはん
17
帝国と呼ばれるぐらいの強豪国の滅亡した背景は様々であるが代替わりのリスク等、急激に膨張した帝国の長期的な維持はやはり難しい。アレクサンドロス大王の帝国は大王の急死が無かったらのifはやはり気になった。2023/03/05
K
9
上巻はエジプト、ギリシア、アッシリア、ペルシア、マケドニア、ローマなど世界史の中でもいわゆる古代史、個人的には魅力的な時代を扱っている。通史ではスキップされがちな帝国の「興亡」を新説交えた各専門家による解説は歴史好きには興味深い内容となっています。また現代地政学の理解の一助にもなるでしょう。下巻へ続く2022/08/06