内容説明
先行きがひどく不透明で、日常生活そのものさえ簡単に様変わりする時代、さまざまな価値観や考え方がある現代社会で、私たちはなにを指針に生きるべきだろうか。私たちが生きるうえで従うべきふるまいや生きかたを指し示す「倫理」とは、本当はどのようなものなのだろうか。
そうした問いが避けがたく差し迫ってくるそのときにこそ、「倫理」を学び直すことの意義が芽ばえてくる。
本書では、「哲学」の中核部門として発展してきた西洋の倫理学から、古代ギリシア、キリスト教、カント、功利主義の思想を取り上げる。「よく生きるとは何か」「幸福とは何か」という問いを道標に、それぞれの「哲学的思考のプロセス」を丁寧に解きほぐして追体験する、「大人の倫理学入門」である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
9
ソクラテスからアリストテレスまで、知から徳へ向かう時に、先に知が分化してそれぞれ徳が付いていくのかと誤解しておりましたが、本書を読んで、構図を改め、徳が身に付く大切さを改めて感じました。「正論を語る割に一向に定着しないマニュアル」と徳との対比は身に沁みました。キリスト教倫理の、例えば隣人愛はつい斜めに見てしまいがちですが、戦争の続く現在だからこそ改めて評価できるものです。自由意志はないという話は、古くは神、現代では自然科学からの一つの帰結でしょうが、人の認識とは実に不思議なものと改めて感じた次第です。2022/07/07
あくび虫
4
とても面白かった。丁寧な解説もさることながら、引用文の明快さに驚かされます。古典の引用は、そもそも日本語が分からんという事態もままありますので。テンポよく紹介され、展開していく思想の道筋は、よくできた小説を読むのにも似た快さがありました。時間をおいて読み直したい一冊。2024/03/10
Go Extreme
2
https://claude.ai/public/artifacts/165777e3-b9f8-40a3-ae6c-59ba3e54f626 2025/06/10
めぐりん
1
他者との関係の中で良く生きる上での道筋を示す「倫理学」が西洋において、どのように発展してきたかを簡潔に整理。読みやすいが、中身は非常に深いように感じられる。特に、第二章キリスト教のパートは再読したい。2022/08/14